空想フランシール４th 【ars S.S】 (ページ32)

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137.電車でGO。ページ32

翌日、俺とAちゃんはうちの最寄りの駅から電車に乗った。

「普段この電車乗らないから新鮮です」
「あー、そっか。俺は何か久々って感じ」
「そう言えば櫻井さんって、何でわざわざあっちの駅使ってるんですか？」

Aちゃんの疑問も無理は無い。

俺んちからは、このJRがどう考えても一番便利だ。
駅まで歩いて行けるんだから。

あっちの駅には、ママチャリ漕いで行ってんだもんな。

「あっちだと、座れるから」
「あ、席に？」
「そうそう。こっちからだと凄いんだよ。ラッシュが」
「それ、結構重要ですよね！毎朝の事だし」

まぁ...キッカケはそれだけど。

今はそんな事より『毎朝愛しのハニーと顔を合わせられるから』なんだけどねー！
言わないけどー！
ストーカーみたいだからー！

やっぱり休日でも混んでる、こっちの電車でドア横に二人で立って窓の外を眺める。

冬の晴れた日

柔らかい陽射しに包まれる町。

「向かい側のホームに立つ櫻井さんをね...」

Aちゃんが、町を眺めながら呟く。

「私、ずっと見てました」
「...ん？」
「こうやって知り合う前から」
「え...」

ドクン、と大きく胸が鳴いた。

ふわりと揺れた、白いワンピースを思い出す。

「私、去年のおみくじ大吉だったんですよ」
「う...ん」
「本当に大吉の一年でした」

お団子頭の君が、ニーッと大きく口を開けて笑う。

こんな子、タイプじゃないってずっと思ってた。

「あー、でも私の運去年で全部使い果たしちゃったかなぁ。今年は凶かも」

アハハって、Aちゃんが笑った時

電車が揺れて、その身体がフラッと俺に寄り掛かった。

「あ、ごめんなさい」
「凶だったら...」

寄り掛かって来た身体を、吊革握ってない方の腕でそっと抱き締める。

「慰めてあげるよ」

Aちゃんの耳元で、ヒソッと言うと「何かえっちですよ？」ってヒソッと返された。

そりゃねぇ。

そうゆー気分で言ったもん。

これが電車じゃなかったら、おもっきりチューしてるもん。俺。

「櫻井さん」
「んー？」
「好き」

ガタンガタンって、電車の音に消されそうな位の小さな声。

「...そんな可愛い事言ったらチューするよ？」
「こんなトコじゃ嫌です。我慢して下さい」
「...はい...」

我慢...します。

大人ですから。