空想フランシール４th 【ars S.S】 (ページ24)

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129.我に返る。ページ24

「...櫻井さん、あのっ...」
「あ...あ、ごめん！」

Aちゃんの声に一気に我に返って、焦ってその身体を離した。

更に顔を真っ赤にさせたAちゃんは、俯いてしまってる。

いやいや、俺！

何してんだ！

いくら嬉しかったからって、何で両親の前で抱き締めちゃったんだよ！

「あれ？翔、もう終わり？」
「お母さん達、席外すわよ？」

良いよ！
変な気を遣うなって！

もう、自分の我慢の出来なさにガッカリだよ。

俺その内、道の真ん中で物凄い激しいキスでもしちゃうんじゃないの？

「あー...マジでごめん...」
「いえ、あの...大丈夫です」

眉を下げて笑うAちゃんに、母さんが「うちのムッツリ息子がごめんなさいねぇ」と謝った。

ムッツリ...否定できません。

「Aさん、ありがとね」
「え...？」
「自分の息子をそんな風に想って貰えるなんて、親として本当に幸せな事よ？」

母さんは、ニコッと笑った。

「翔がそんな良い男に成長してるなんて、嬉しいなぁ、母さん」
「私の育て方が良かったのね」
「俺だろう？俺を尊敬してるらしいぞ、翔は」

ヤイヤイ言い合ってる俺の両親を見てるAちゃんの顔はとても穏やかで

俺、また抱き締めたくなっちゃったけど

膝の上でグッと拳を握って我慢した。

だけど、何かさ。

そんな両親を見てると、俺、いつかこんな夫婦になれたら良いなって思ったんだ。

結局、夕飯まで実家で食べさせて貰って俺らはAちゃんの運転で俺の家に戻った。

「Aちゃん」

ソファに座りながら、キッチンでグラスにジュースを注いでるAちゃんに声を掛ける。

「俺の好きなトコって...あんなにあったの？」
「え？フフッ、まだまだありますよ？」

両手にグラスを持って、Aちゃんが俺の隣に座った。

Aちゃんが両手に持ってるグラスを二つとも受け取ってすぐにローテーブルに置く。

「ありがと、お世辞でも嬉しかった」
「お世辞なんかじゃないですよ？ご両親に嘘なんかつけないでしょ」

全部本音です、って笑う君に両手を広げる。

「おいで」

俺の胸にキュッと抱き付いたAちゃんを、ギューっと抱き締める。

「俺もいっぱいあるよ、Aちゃんの好きなトコ」
「えー...本当ですか？」

当然でしょ。

きっと聞いたら、Aちゃん引くと思うよ。

俺、Aちゃんのすっげぇ細かいトコまで『好き』って思ってるんだから。