空想フランシール４th 【ars S.S】 (ページ16)

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121.覚悟できない。ページ16

夕方頃に家を出て、今日は一晩中動いてる電車に乗り込んでカウントダウンのイベントが行われる遊園地に向かう。

皆、どこか浮き足立って見える。

遊園地は混んでるんだけど。

雰囲気がお祭り騒ぎで、混んでる事も含めて楽しくなって来る。

「櫻井さん、あれ乗りましょう！」
「えぇぇっ！？」

Aちゃんが指差した先には引く程刺激的なコースター。

「お...俺、高所恐怖しょ...」
「行きましょうー！」
「高所...」

全然聞いてない！

俺の言葉、全然耳に入ってない！

手首を掴まれて、コースターの列に引っ張られる。

「Aちゃん、ほら、1時間待ちだよ！やめとこ！」
「1時間なんて喋ってたらあっとゆーまですよ？」
「そりゃそうなんだけど...」

1時間の待ち時間の間、俺は自分が高所恐怖症だと何度も言ったんだけど「大丈夫！ずっと手を握っててあげます！」って励まされた。

手を握ってくれてても、怖いもんは怖いんだけど...。

覚悟が出来ないまま、プラットホームに到着してしまって

覚悟が出来ないまま、ツヤツヤ光るボディのマシーンに乗り込まされて

覚悟が出来ないまま、安全バーが下ろされて

覚悟が出来ないまま、信じられない高さに俺は連れてかれて

覚悟が出来ない俺の手をAちゃんがギュって握る。

「櫻井さん？大丈夫ですよ！」
「...」
「私が守ってあげます」

か...可愛い。

天使か！

...いやちょっと待て...嫌がる俺を無理やりこんなモンに乗せたんだから悪魔か？

天使の顔した悪魔か！ニノの仲間か！

なんて馬鹿な事考えてたら、俺の身体は夜の闇に投げ捨てられた...ような感覚に襲われた。

理解できない。

こんなモンを造る人間が理解できない。

これを「楽しい」だなんて思う人間が理解できない。

恐怖の感情が欠落してんじゃねぇの！？
人として大切な何かが欠けてるんじゃねぇの！？

バーカ！バーカ！！滅びろ！！絶叫マシーン滅びろ！！

地上に降り立った俺の脚は、フラリとよろけた。

「櫻井さん、大丈夫ですか？」
「...ん...」
「フフッ、途中でバーカ！って叫んでましたよ？」

あ...声に出てたんだ...。

「Aちゃんは楽しかったの...？」
「もちろん！最高ですよ！」

あんな恐ろしいモノを最高だなんて、理解できない...って思うけど。

めっちゃ楽しそうだから、Aちゃんだけは特別に理解してあげようかな。

でもできれば、滅びろ。絶叫マシーン。