PRESTO！【ars M.A】 (ページ8)

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8.DOKI・DOKI。ページ8

Aちゃんは「初詣...」と小さく呟き、俺の顔をじっと見た。

「あ...えっ...と...おみくじとかさ、引きに行かない！？屋台で林檎飴買ったりさ！」
「んー...」
「お参りするだけ！ホント、それだけだよ！他には俺、絶対何もしないから！」

沈黙が怖くて、ペラペラと話してる俺にAちゃんが「男の人って、本当に言うんだね」って大笑いした。

「え...？何...を？」
「『何もしないから』って」

...しまったーーーーーーー！！！！！

俺、今までも絶対に言わなかったのに！
ホテル誘う時も、家に誘う時も「何もしないから」だけは言わなかったのに！

だって、するもん。
絶対するもん。
するのが目的だもん。

言ったら胡散臭いから言わなかったのに！

なのに、何で今言っちゃったかなー、俺！！
馬鹿！！

そりゃあ本当に何もしないけど

...何もしないつもりだけど

いや、あわよくば何かしたいけど...

あ、いやいや駄目だよ。馬鹿雅紀！

「なんてね？ウソウソ！分かってるよ、そんな事念を押さなくたって」
「...へ？」
「雅紀くんが私なんかに、何かするはず無いもん」
「...へ？」

Aちゃんがクスって笑った。

「もしかして初詣行く約束してた女の子にキャンセルでもされたの？」
「え...いや...」

箒の柄の先で俺の腕をツンツンと突きながら、Aちゃんはちょっと意地悪な顔をする。

そんな顔も...何だよ、可愛いとか...もう。

「お昼からでも良い？」
「...えっ！？」
「やっぱり仕事の後ちょっと寝たいから、その後でも良いかな？」
「うんっ！もちろん！寝て寝て！」

やった...

やった！
何か勘違いされてるけど、OKなんだよね！？

「じゃあ...えっと、何時だったら大丈夫？」
「んー...一時位だったら」
「一時ね！分かった！どうする！？そこの神社にする！？それとも大きいトコ行く！？」
「フフッ、雅紀くんに任せるよ。...あっ！仕事戻らなきゃ！」

Aちゃんは店内を覗いてちょっと混んでる事に気付いて俺に「ごめんね」って申し訳無さそうな顔を見せた。

「ううん、じゃあお昼の一時に駅で待ってるね！」
「うん！お疲れ様！」
「うんっ！Aちゃんは、頑張って！」

ありがとー、って笑ったAちゃんが駆け足で店内に戻って行った。

ドキドキ。

初ドキドキは、良い方向のドキドキに変わった。

「...やったよ！」

俺は一人で小さくガッツポーズして、大声を出しちゃいそうなテンションをググっと必死で抑えたんだ。