PRESTO！【ars M.A】 (ページ7)

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7.初...。ページ7

「Aちゃん、偉いね！今日も明日も仕事なんて」
「んー...誰かが働かなきゃいけないし...」

集めたゴミをサッサッとチリトリに掃き入れてAちゃんは、「私、一応店長だし」って笑う。

「雅紀くんも朝からこんな遅くまで働いてたんでしょ？偉いよー」
「俺もこんなんだけど一応てんちょーさんだからねぇ」

スリスリと擦り合わせたままだった自分の手を何気無く見て

同時に目に入った、腕時計のフェイス。

針は重なるどころか、いつの間にか少しズレてた。

「あっ！年越してる！」
「えっ！？知らない間に...」
「立ち話してる間に新年迎えちゃってたね」
「でも一人で掃除しながら寂しく年越しちゃうよりは良かったよ！」

箒を俺に見せながら、Aちゃんは悪戯っぽく笑った。

「俺も...一人じゃなくて良かったぁ！」

本当は『Aちゃんと一緒に年が越せて嬉しいよ』とか言いたいけど、そんなソレっぽい事言って警戒されたら嫌だから

「三十路男子が一人ぼっちの年越しは悲し過ぎるもんね！」

なんて、わざと軽く言ってみせる。

「雅紀くん」
「ん？」
「明けましておめでとうございます」
「えっ！？あっ...」

目の前のAちゃんは、キッチリ腰を折って俺に頭を下げていた。

「あっ...うん、明けましておめで...と...」

綺麗なお辞儀に、ドキッとする。

「今年もよろしくお願いします」

ニッと微笑んで、Aちゃんがそう言った。

今年もよろしく、って

言った。

今年も、って。

「うんっ！今年もっ！よろしくね！」

何て素敵な年越しなんだろう！

華やかなカウントダウンとか、そんなんじゃないけど俺にとってはすっげぇ特別な一年の終わりと始まりだ。

コンビニの傍を、初詣に出掛けるのか晴れ着を着て楽しそうに笑う女の子達が歩いてく。

Aちゃんは...初詣って行くのかな...

「ねぇ...Aちゃんさ、今から朝まで勤務なんだよね...？」
「ん？うん、そうだよ。９時まで！」
「その後って...休み？」
「休みだけど家に帰って寝ちゃうんだろうなー。本当の寝正月だよ」

ハハッって笑うAちゃんが、箒とチリトリを持って店の入り口に歩き出した。

「あの...さ！初詣！」
「え？」
「...俺と、行かない？...初詣...なんて...」

初笑いとか、初夢とかあるけど

これは何だろう。

初お誘い？

初ドキドキだ、俺。