PRESTO！【ars M.A】 (ページ26)

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26.優しいロクデナシ。ページ26

胸がギュギュッて苦しい。

「雅紀くん、そんな顔しないの！」
「...え？」
「痛そうな顔してるよ？泣きそうな顔してる」

言われて、自分が眉間に思いっきり皺を寄せてる事に気が付いた。

「ねぇ、雅紀くん」
「ん？」
「こうやって今まで遊んでた子、全員に話して行くの？」
「まぁ...そのつもり...」

だって、身辺整理しなきゃAちゃんに向き合えないよ。

「そんな事してたら、雅紀くん死んじゃいそう」

フフフッて、ヒトミちゃんが笑う。

「遊び人のくせに、どーしてそんなに優しいかなぁ。もっと自分勝手になって良いと思うよ？酷い男になっちゃえば良いんだよ」

自分勝手に...酷い男

「いや...既に俺、酷い男じゃない？身体しか繋げてなかったんだから」
「けど、遊んでた女の子達だって同じでしょ？雅紀くんと付き合いたいって子、いたの？」
「...ううん、えっちだけ」
「ほら、同じ！だったら、もー良いんじゃない？」

俺が大好きだって思ってた女の子達は、俺に『彼氏』になる事を要求して来ない子だった。

お互い割り切って、その時だけ楽しければ充分で

朝になれば、じゃあね！って笑ってバイバイ出来る子だ。

「とりあえず女の子の連絡先は全員分消しちゃって、でー...あっちから連絡して来た子にだけ説明したら？」

好きな子が居るからもう会えないんだ、ってね？って、ヒトミちゃんは今まで見た中で一番大人っぽい表情を見せた。

「そんなんで...ケジメになる？」
「なるよ。だって、雅紀くんは行動に移したもん」
「そう...なのかな...」
「後ねぇ、一つ教えてあげるとね？」

ヒトミちゃんが、チョイチョイって俺を手招きする。

谷間...は見ないように顔を寄せる。

「身体だけの男に、女は何も期待なんてしてないし」

だから逆にビックリしちゃうよ、こんな律儀に謝られたら。

そう言ってヒトミちゃんは、眉を顰めてクスッと笑った。

帰りの電車の中、携帯を出して『遊べる女の子』のデータを全部消した。

罪悪感で胸がチクチクしたけど、こんなの自己満足の偽善だなって思う。

「...ごめんね...」

小さく吐き出した言葉は、誰に向けたんだろう。

今まで遊んじゃった女の子達？

それとも、Aちゃん？

それとも...昔の俺から今の自分に？

よく分かんないけど、今は四方八方に向かって土下座したい気分だ。