PRESTO！【ars M.A】 (ページ24)

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24.理性。ページ24

冷たい風が俺の髪を乱す。

初めて降りる駅って、何だか異世界な感じがしちゃうのは何でなんだろう。
俺だけかな？

見慣れない駅前の改札前の大きな柱に凭れて、ヒトミちゃんを待つ。

「雅紀くん！」

声がした方を見ると、こんなに寒いのにえらく薄着なヒトミちゃんが手を振りながら俺に駆け寄って来た。

「雅紀くん、久し振りっ！」
「おぅっ！？」

ヒトミちゃんはふわりと俺の腕に絡みつく。
大きな胸をギューって押し付けるみたいに。

「あっ...えっと...」
「ん？どしたの？」

不思議そうにヒトミちゃんは俺の顔を覗き込んで来る。

そうだよね、そうだよ。

だって、前に会った時だってヒトミちゃんはこうやって腕に絡みついて来て...で、俺はどうしたんだっけ？
...あぁ、可愛いねとか言ったんだっけ...。

「雅紀くん？」

ふんわり、香水の匂い。
腕に当たる、柔らかい胸。

俺を見上げるクリクリの可愛い目。
ポッテリした、濡れる唇...

あー...吸い寄せられそう......って、いかんいかん！！

「ヒッ...ヒトミちゃん！この辺に、喫茶店とかさ！無い！？」
「え？うち来ないの？うちで話そ？」
「うちっ！？...うちー...は...」

首を傾げて「ね？行こ？」って微笑むヒトミちゃん。

うち...か...

いやいや、駄目だって！！俺！！

うちなんか行っちゃったら、我慢できるはず無いっ！！
だって気持ちと下半身は別物！！
しかも俺、絶賛禁欲中だし！！爆発寸前だし！！

「...えっと...あ！あそこにファーストフード店あるから、あそこにしよ！ねっ！」
「んー...別に良いけど...何か変だよ？雅紀くん」
「そんなコト、無いって！いつも通り！」

どう考えても全然いつも通りじゃない俺と、ずっと不思議そうにしてるヒトミちゃんが煌々と明るい健全なファーストフード店の中に入る。

向かい合わせに座ってコーラを啜りながらヒトミちゃんを見ると、俺と同じようにストローを咥えて俺を見てる。

「...あの...ね？」
「うん、どうしたの？」
「俺...ね？」
「うん、なぁに？」

クスクスって、ヒトミちゃんが面白そうに笑う。

「俺...好きな人がね...出来て...」

ちゃんと、正直に話そうって思った。

好きな人が出来たから、もういい加減な事できない...って。

『好きな人』って言葉を出しただけで、Aちゃんの顔が浮かんで来る。

ドキン、って胸が鳴る。

ヒトミちゃんの胸が腕にプニョって当たった時もドキンってしたけど

何か、ちょっと違うんだ。