PRESTO！【ars M.A】 (ページ3)

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3.身辺整理の方向性。ページ3

買ったばかりのほっかほか肉まんを頬張りながら、家へ帰る。

段ボールを持ってたから自転車に乗れなくって、今日の俺は徒歩だ。

「んまっ」

寒い風に吹かれながら食べる肉まんは、また格別だなぁ...いや、違うな。Aちゃんから買ったからだなぁ！なんて浮かれて考えてたら、ダウンのポケットに入れてたスマホが鳴る。

「んんっ...！？」

何気無くその画面を見て、肉まんが喉に詰まった。

「...ヒトミちゃん...」

どうしよう...。

え...、どうする...？

立ち止まって迷ってる内に、着信は途切れた。

そうだ...。

俺は、『楽園』だと勘違いしてたあっちの世界をそのまんまにしてるんだ...。

・

「お前、身辺整理の方向性間違ってんだろうが！」

目の前に居る色白な友人が、ギロっと睨んで来る。

「...でも...」
「でもじゃねぇわ！人んちに何送りつけて来てんだ、あぁっ！？」
「ちが...」
「違わねぇだろうが！」

DVDの嫁ぎ先の主人であるニノは、可愛い顔を思いっきり悪魔の形相にして俺に詰め寄って来た。

段ボールを送った二日後、俺の服屋に閉店間際やって来たニノは服を畳んでる俺のケツを思いっきりドカっと蹴りながら「顔貸せや」と凄んで来て

閉店作業が終わるまで、店のソファにふんぞり返って座って待ってて

そのまま、居酒屋に拉致られて...今に至る。

「新聞屋の集金だの、酒屋の宅配だの、布団のセールスマンだの、相手が変わるだけのワンパターンなDVDの何が面白れぇんだよ」
「...観たんじゃん...」
「パッケージ見たら分かるわ。興味の無いモン観る程、オレは暇じゃねぇ」
「じゃあ、ニノはどんなのに興味あんの？」
「女優のクオリティが高い物。良い顔、良い声、良いカラダ」

フンっと顎を上げて得意げに言われても...。

「ってかさぁ...相葉さんはバーチャルじゃなくって、リアルの方をどうにかしねぇと駄目だろ？」
「...そう...なんだけど...」
「自分の蒔いた種だろうが」
「...そう...なんだけど...」
「クリーンな雅紀くんとやらに、なるんだろ？」

煙草に火を点けたニノが、煙たそうに眉を顰めながら「DVD整理したって、クリーンにはならねぇよ」って笑う。

「どうしよ...」
「何が」
「ちゃんと身辺整理しなくっちゃ...」
「だな、本気の恋がしたいならこのまんまはマズいんじゃね？」

マズイよね、分かってる。

このままじゃAちゃんに『女好きの遊び人』って思われたまんまでも...仕方無いんだから。