PRESTO！【ars M.A】 (ページ19)

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19.とんがり。ページ19

「相葉くん、格好良いね。背も高いし、細いし、優しそうだし」

俺より余裕で背も高いし、ガタイも良い香取さんが朗らかに笑う。

アナタの方がずっと格好良いんですけど...。

シンプルだけど質の良いブルゾンに、派手なマフラーを口元までグルグルに巻いて、ふわふわの茶色い髪。

若く見えるけど、立ち振る舞いの落ち着き方がどー見ても俺より大人。

「あ、もしかして...Aの彼氏？」

香取さんの言葉にビクッとする。

同時に、嫌な予感。

「違うよー！こんなカッコイイ子が私の彼氏なはず無いでしょ？」

やっぱりね...そりゃそーだよ？
彼氏じゃないもん。

だけど...ダメージでっかい。

『カッコイイ』って言われて、こんなに嬉しくない事ってあるんだな...

「そうなの？彼氏じゃないんだ」
「やめてよ、雅紀くんに失礼だから！」

笑いながら香取さんに話すAちゃんの後ろで俺はバレないように俯いて小さく溜息を吐いて

顔を上げると香取さんと目が合った。

その顔は少し微笑んでんだけど俺を気の毒そうに見てたのは気のせい...じゃないよな。

何だよ、別に気の毒じゃないよ。

何だよ。

ちょっと悔しくて香取さんから顔を逸らすと、コンビニのガラスに俺が映ってた。

口を尖らせて、あからさまな『拗ね顔』な自分。

慌てて、尖ってた口を戻して口角を上げる。

「そう言えば慎吾くん、何しに来てたの？」
「何しに...って、俺、オーナーなんだから新年の挨拶くらい来るだろう」
「あ、そっか」
「A、もーちょっとオーナーを敬えよ？」

やっぱりオーナーとスタッフの関係にしては、仲が良過ぎる気がするのは

俺が曲がった視線で見ちゃってるからなのかな...

「じゃ、俺行くわ」
「うん、お疲れ様！」
「はいはい、お疲れ。相葉くん、また」

多分、魂抜けたみたいなになってるだろう俺に香取さんが軽く手を挙げた。

「あっ...あ、はい...また...」

...って、『また』って何だよ！

いらない！『また』いらない！！

香取さんはそこに停めてあるでっかい四駆に乗り込んで、文字通り颯爽と走って行った。

「あ、雅紀くん！コーヒーだよね？中、入ろ？」
「...うん...」

モヤモヤ

モヤモヤ

コンビニに入る時、またガラスに映る自分の姿。

やっぱり、口が尖ってて掌で口元をそっと隠した。