PRESTO！【ars M.A】 (ページ18)

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18.イケテルメンズ。ページ18

地元の駅まで戻る頃には辺りはすっかり暗くなってた。

何か、それだけで『一日が終わっちゃうんだな...』って妙に寂しくなる。

「雅紀くん、今日は駅まで徒歩？」
「うん、着物だからね。Aちゃんは？」
「私は自転車。店の前に停めさせて貰ってるから寄ってかなきゃ」
「そっか。俺もあったかいコーヒー買いたいから一緒に行くよ」

本当にあったかいコーヒーは飲みたいけど

でも別に、それが煙草でもガムでも何でも構わない。

何か理由をつけて、もうちょっとでもAちゃんと一緒に居れたらそんだけで良いんだもん。

「じゃー、雅紀くんも行こ行こ！」ってちょっと小走りになるAちゃんを見ながら

何だよもー、ちょーかわいー！なんて、俺はそれこそちょー能天気で。

辿り着いたコンビニの中から出て来たイケメンにも気付いてなくて

「あ、A」

そのイケメンがAちゃんを呼び捨てにした事で初めて、能天気な気分がスーッと冷めた。

「慎吾くん！」

Aちゃんが、イケメンに向かってパッて笑った顔を見て...嬉しそうに笑った顔を見て

能天気どころか、ドロッて嫌な気分が胸ん中に流れ込んで来た。

「こら、A。呼び方」
「あっ...！ごめん、つい...」
「ハハッ、まぁ良いけどさ」
「そうだよー、今は良いでしょ？仕事じゃないんだし」

...何だよ、この雰囲気。
何の話してんだか全然分かんないし...。
Aちゃん、イケメンとの距離ちょー近いし...

こんなの、俺より親しい間柄なんだなって

嫌でも分かっちゃうよ...。

「あ、雅紀くん」
「...えっ！？あ、はい！」
「紹介するね？」
「え...」

紹介！？
何っ！？誰っ！？
このイケメン、誰なのっ！？

こえぇ！！！

「うちの店のオーナーなの」
「へっ？オーナー？」
「うん、オーナーの香取さん」

オーナー...？

チラッと香取さんを見たら、ニコッと微笑んで会釈をしてくれた。

「慎吾くん、こちら相葉雅紀くん。あ！クリスマスにケーキ売るの手伝ってくれた人！」
「あぁ！あの時の！」

香取さんは大きな口をニカッと開けて、「ありがとう！あの時は助かったよ！」って爽やかに笑う。

「あ...えっと...はい」

何か、居心地悪くてペコッて頭を下げてそのまま顔上げる時にソッポ向いちゃって

どーしてオーナーを『慎吾くん』なんて呼んでるの？

とか

何でそんなに距離感近いの？

とか

モヤモヤし過ぎて、俺って女々しいんだなぁ...なんて自分再発見だよ...。