アイドラッグ【ars K.N】 (ページ36)

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もちろん、まー君に電話番号教えろ！って迫った。

でもホント頑固ってゆーか...融通効かないとゆーか...

「オレはホタテだ！」の一点張り。

「いつか炙ってやるからな！」

オレの言葉にも、口をムゥッと閉じてる。

だけど、オレがショボン...ってしたら心配そうに眉毛を下げてこっちを伺って来る。

「カズ...、きっと時間が経てば忘れられるよ」
「別に忘れたくねぇんだけど」
「でも...」
「忘れたい気持ちなんかじゃ無い」
「カズ...」

どーしてまー君が泣きそうな顔をするかなぁ。

先にそんな顔されたら、オレ笑うしか無いじゃん。

でも、ま、まー君のそーゆートコに救われてんだけどね。

...うわ、キモ！オレ、キモ！

これ、絶対本人に言っちゃダメなやつ！

まぁでもね。

ハタチそこそこの健全な男子です。

報われない恋だけにしがみ付いてるのは辛かった。

「ののちゃん好きだとか言いながら、何で彼女作ってんの？」
「営みの素晴らしさを知ってしまってる男子に、それを我慢しろとゆーのは酷な話です」
「お別れを前提にお付き合いされてる女の子が可哀想...」
「別にお別れ前提じゃねぇよ？...もしかするとA以上に想える子に出会えるかも...だし...」

まー君が表情だけで『嘘付けー！』って言った。
表情だけで。
おもしろい顔。

「ってかさぁ、俺からは何も言えないけどカズだってののちゃんの大学知ってんだから、会いに行けば良いじゃん」
「......そう、なんだけど...」

オレは、よく考えたら会いに行ってもそれ以上を言えないってコトに気付いたんだ。

失言、だ。

あれは完全に失言だった。

「...まー君が元サヤなんかするから...」
「え？俺？」
「お前が元サヤなんかしなかったら、あんな話にならなかったのに！そうだ！そうだよ！まー君のせいだ！」
「えっ！？俺！？何なの！？」

どうしてオレ、あんなコト言っちゃったんだろう！

大した恋愛経験も無いくせに、何が分かるっての！

別れても、忘れられなくて

また隣に居たくなる、また抱き締めたくなる、そんな事だってあるんだなんて知らなかったくせに。

「...忘れる...ってのも、オトナになるってコト...？」
「カズ...」
「忘れらんない...どうしよ、オレずーっとこのまま？」
「ちょ...カズ、大丈夫...？」

ガクンと頭を下げたオレのつむじを、まー君がツンツンして来る。

思い出す。

Aを思い出す。

でも忘れなきゃ。

いつまでも首を絞められたまんまだ。