アイドラッグ【ars K.N】 (ページ34)

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『アイノコトバ』sideN ページ34

若さとは、無敵であり、最強であり、それはそれは素晴らしい武器だ。

でも時として

若さとは、愚かだ。

愚かだったあの頃のオレに、今のオレが置かれてる悲惨な状況を教えてやりたい。

「お前の余計な一言がオレの十数年を縛り付けるんだからな！？」と。

お前みたいなガキに、恋愛の何が分かるんだ。

何を一丁前に「ありえない」とか言っちゃってんのよ。

それこそ、ありえないんですけど。

A無しの人生なんて、ありえないんですけど。

ーーーーーーー『アイノコトバ』kazunari

「相葉家長男の名前が雅和なのは、まー君がオレを好き過ぎるからでしょ？」
「奥さんが和香ちゃんだからですー！...って、何度同じコト言わせんの？」
「じゃあ、オレにも同じコトを何度も言わせんな」
「何が」

たまに帰って来る地元で、幼馴染のまー君と居酒屋で飲むのは恒例行事。

30過ぎたオッサンが、30過ぎたオッサンを『まー君』なんて可愛い呼び方してんのを若干キモいとも思うけど今更変えられないモンで。

幼稚園児のオレに会えたら、将来キモい仕上がりになるから相葉雅紀くんの事は「相葉さん」って呼んでおこうねーって教え込むのに。

「そろそろ、白状しろや」
「......ダメだよ、言えない」
「まー君はオレの気持ち知ってんでしょ！」
「俺はののちゃんと約束したの！ダメ！」

意外と頑固...
優男な顔してるくせに。

まー君がバンビみたいな目でオレをジィ...っと見る。

「...何よ」
「そんなに好きなら、どーしてあの時に必死にならなかったの？」
「......いや...それは...」
「自然消滅なんて、必死になれば絶対に起きないからね？話し合いすらしなかった自分が悪いんだからね？」

もう、同じコトで何回も何回も説教されてる。

うんざり。
正論だから、言い返せないし。

このヒト、真っ直ぐ過ぎて敵わない。

「だから、言ってんじゃん。まさかホントに会えなくなるなんて思ってなかったんだってば...」

好きで好きで、でも好きって気持ちも何か違う。
それ以上の気持ちだ、って想ってたAと離れてしまったのは

まぁ、若さ故...だった気がする。

最初のキッカケは、本当に課題がキツくて休日返上しなきゃヤバかったから。

でも、大学で出来た友達と遊ぶのも楽しくて、そんでまた東京楽しくて、でも遊ぶには金が必要で

バイト始めたら、Aに会いに帰る時間が取れなくなった。

それでも大丈夫だ！なんて思ってたオレの能天気さを呪う。