純情サディスティック【ars K.N】 (ページ5)

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5.オシゴト。ページ5

腕組みをして、私の顔をジッと見てる二宮さんは今にも甘い言葉を優しい声で囁きそうな表情なのに

「オレ、締切守んないとか絶対に許さねぇよ？」
「でも...」
「でも、じゃねぇわ。それが仕事だろうが」

厳しい言葉を冷たい声で吐き続ける。

「先生は書くのが仕事。オレは書かせるのが仕事。お互いシッカリ仕事しようなって言ってんだろ？」

しかも正論だから、何も言い返せない。

「ってか、いつまでほっぺ隠してんの？」
「あ...」

右頬に添えたままだった手を、そっと下ろした。

「ンフフ、気にするほどじゃねぇよ？ニキビ」
「...気にします...」

嫌味な程にお肌スベスベのあなたには分からないでしょうけど。

口には出せないから心の中で悪態ついて、俯いてると視界に二宮さんの手が入って来た。

そして次の瞬間

その手は私の右頬に、ふわりと触れた。

「でっかいニキビって言ったの、傷付いた？ゴメンな？」

年頃のオンナノコだもんな、ってクフフと小さく笑う。

心臓が早鐘のようにドクドクドクと脈打つ。

何も言えず、金魚のように口をパクパクさせてると、二宮さんの手が私の頬からスッと離れた。

手が離れても、私の右頬はジンジンと熱を持ってる。

「先生さぁ...」
「あっ！...あの...」
「ん？何？」
「先生...って呼ばれるの...好きじゃないんです...」

あー...こんな事言ったらまたキツイ言葉言われるかも...。
でも最初に言っておかなきゃ、言えなくなっちゃいそうだし。

ジンジン熱いほっぺたを出来るだけ気にしないようにしながら、二宮さんの顔を見た。

「そうなの？別に呼び方なんて何でも良いけど...何て呼ばれたい？」

意外にも、アッサリと私の言葉を受け入れてくれてちょっと拍子抜けする。

「先生以外なら、何でも良いです」
「そ？じゃあ...」

腕を組んだまま、んー、と少しだけ考えた後

「A、な」

って、彼は驚く程の優しい顔で微笑んだ。

「A、あのさ」
「えっ！？あっ、はいっ！！」

呼び捨て！
呼び捨て！！
呼び捨て！！！

どうしよう、パパ以外の男の人に名前を呼び捨てされるなんて初めてでどうしたら良いのか分かんない！

「A、まずプロの自覚持てよ？」
「...え？」
「女子高生だろうが、適当な事したらオレは容赦しねぇよ？」
「はい...すみません...」

もう...私

感情が冷えたり昂ぶったり...パニックです。