極楽ハニー 9th【ars K.N】 (ページ37)

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314.白に白。ページ37

一人になって、カーテンをまた一枚一枚広げて

この柄は違うな...

この色はちょっと派手過ぎる...

なんて、頭の中でブツブツ言いながら店内を歩く。

「...あ...」

もう、どれが良いのやらサッパリ分からないって思い始めた頃

私は一枚のカーテンの前で立ち止まった。

ひらりと広げて、思わず口角が緩む。

「どう？決まった？」
「あ、カズ」

いつの間にか隣に立ってたニノミヤが、私が広げてたカーテンを触る。

「これにする？」
「カズはどう思う？」
「ん？フフッ、Aらしいの選んだなーと思った」

どうしてもあの部屋に大きな色を入れるのが躊躇われた私が選んだのは

白地に白い糸で刺繍の入ってる物。

「オレもさぁ、ちょっと店ん中ウロウロしてたんだけどね？」
「うん」
「良い感じのクッションカバー見つけたのよ。それがさ、このカーテンにすげぇ合う」
「えっ！？ホント？どれどれ？」

ニノミヤが見つけたってゆークッションカバーを一緒に見に行く。

それはハワイアンキルトで、私が選んだカーテンの刺繍によく似てる。

「オレのとAの、二枚いるでしょ？」
「私のも？やったぁ！」
「何色にする？やっぱオレは黄色かなー！」
「金運？」
「金運！」

ケラケラ笑いながら、私達はカーテンをオーダーしてヌードクッションとクッションカバーを購入して帰った。

家に帰って、買って来たクッションを二つソファに並べる。

どちらも淡い色味の黄色と、ピンク。

白い部屋に、ほんの少しの色が増えた。

「カーテンも早く付けたいなー」
「いつ仕上がるんだっけ？」
「来週だって」

ニノミヤがクッションを抱えながら、「でも来週は取りに行けるか微妙だしなぁ...」って呟く。

そうだ、来週は...

「A、ちゃんと覚えてた？来週」
「もちろん！でもホントに私が行っても良いの？」
「うん。みんな彼女や嫁連れて来るから」
「そっか。フフッ、楽しみ」

ニノミヤがソファから立ち上がる。

「何か飲む？」
「あ、うん。ありがと」

キッチンへ行った彼が、カウンターの向こうからグラスにジュースを注ぎながら「ねぇ」って声を掛けてきた。

「結婚式終わったら、連絡するから」
「うん」
「二次会の場所、分かる？」
「うん、大丈夫」

来週末は、櫻井さんの結婚式。

櫻井さんは、二次会に私を正式に誘ってくれた。

「あー...翔ちゃんが結婚しちゃうー...」

何だかニノミヤは、寂しいんだか嬉しいんだかよく分からない顔で笑った。