極楽ハニー 9th【ars K.N】 (ページ31)

今日:9 hit、昨日:2 hit、合計:1,594,035 hit

308.前言撤回。ページ31

私達は、すっかり陽が落ちて肌寒くなってきた頃

お腹も空いて、ホテルのスタッフさんに歩いて行ける距離にある地元の居酒屋さんを教えて貰ってご飯を食べた。

テビチにかぶりついてる私に

「ホント、Aは食の冒険家だよね」

彼は、ビール片手にポーク玉子を食べながら言った。

「美味しいよ？豚足」
「豚の足だぞ？分かってる？」
「ミミガーも美味しいよ」
「豚の耳だぞ？分かってる？」

相変わらず食で冒険したくないニノミヤが、次に手を伸ばしたのは豆腐チャンプル。

「ねぇ、何でゴーヤチャンプルじゃなくてお豆腐にしたの？」
「ゴーヤ、苦いもん」
「ビールも苦くない？」
「ビールは別ぅ」

語尾にハート付いてたな...な言い方でちょっと唇を尖らせると、またジョッキに口を付けた。

地元の料理を存分に楽しんで、お酒も楽しんで

ベロベロ...とは行かないまでも、そこそこ酔っ払った私達は

繋いだ手をブンブン振りながら、ホテルまでの道を歩いた。

たまに走ったり、こけそうになって大笑いしたり

子供が遊んでるみたいに。

「Aー」

ニノミヤが、路肩の縁石にヒョイっと飛び乗って振り返らずに私を呼ぶ。

「何ー？」
「あのさぁ」
「うん」

首だけ振り返って、フフンって笑って

「オレのコト、幸せにしてね」

前にも言ってた事を、また言うから

「フフッ、酔っ払ってんの？」

訊けば

「かもね」

緩く微笑む。

縁石の上をヒョイヒョイと歩き続けるニノミヤが

「Aがオレを幸せにしてくれるならさぁ」

ピタッと立ち止まり、振り返った。

私もつられて、立ち止まる。

「オレはAを、死ぬ程幸せにしてやるよ」

風が吹く。

ニノミヤの髪がふわっと、揺れた。

「...酔ってんの...？」
「かもね。でも...」
「......」
「今ならオレ、自信持って言えるからさぁ。あん時の言葉、撤回させてよ」
「あん時...の...って」

縁石から下りたニノミヤが立ち止まってる私の前まで歩いて来て、また私の手を取って口角をキュッと上げる。

「オレしかAを幸せにできない。だってA、オレのコト大好きでしょ？」

あの時『センパイを幸せに出来るのが、オレなのか他の誰かなのかは、センパイにしか分かんない』...なんて言ってたくせに。

何、何なの。
何なの、ホント。

「...この酔っ払い...」
「酔った勢いに任せた、素直な気持ちよ？」
「...ばか」

クハッ！って吹き出したニノミヤが、繋いでない方の手で私の頭をグシャグシャ撫でた。