極楽ハニー 9th【ars K.N】 (ページ23)

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300.旅は続くよ。ページ23

さすがにジュース一杯で一時間以上居座るのは申し訳無くなって、私達はノロノロと洞窟を出た。

「ごちそーさまでーす！」なんて店員さんに愛想を振りまくニノミヤは、もうこーゆー性質なんだな...と思いながら

私もそれに倣って「ごちそうさまです」って頭を下げて階段を駆け上がった。

「...っ！？眩しいっ！」
「目がっ...！！」

暗い所から燦々と太陽注ぐ青空の下に出たもんだから、二人して目が眩んでフラつく。

目をシパシパさせながら緑溢れる道を歩いて、車に戻るとまたニノミヤはナビをセットし始めた。

「次はどこ？」
「世界遺産にでも行ってみる？こっから近いっぽいし」
「あ、あそこでしょ。聖地」
「うん、オレも行ってみたかったんだよねぇ」

そこは、太古琉球王国の人々が祈りの場として崇めていた御嶽と呼ばれる場所。

離れたとこにある駐車場から歩いて入口に着くと、一気に空気が変わったのを感じた。

パワースポットって流行ってるけど、私は実はそこまで興味が無くて

だけど、そんな私でもここには間違い無く何かしらの力があるんだ...って漠然と思った。

それはニノミヤも同じみたいで、口数が減ってサワサワと緑が揺れる音がする道を

顔を空に向けながら、歩いてる。

二本の鐘乳石が作った、三角形の空間の中に彼が立った。

柔らかい陽射しに照らされる、白い横顔

ゆっくりと瞬きする、長い睫毛

風が揺らす、柔らかい髪

見惚れる、ってこーゆーコトだ。

自分の彼氏に見惚れるって、もう他人には言えない域の話だと思う。

だから、絶対に誰にも、ニノミヤ本人にも言わないけど

私は、彼に見惚れてた。

ふいに、ニノミヤが私を見て
不思議そうに、首を傾げる。

「ん？A、来ないの？」
「え？...あ」
「こっからの景色、綺麗だよ」

少し先に進んだニノミヤが、もう一度私を振り返る。

「おいで」

微笑むニノミヤを見て、1年前には想像出来なかった今の状況に涙が出そうになった。

こんな神聖な場所に居るからなのかな、心が浄化とかされちゃってるのかもしれない。

「A...？」
「......」
「どったの」

動けなくなった私の前まで戻って来たニノミヤが、「うん、よしよし。分かる分かる」って何を分かってるのか分かんないけど私の頭を撫でた。

そして手を引いて、鐘乳石の間を抜ける。

「すげぇな」
「...綺麗...」
「ね」
「うん...」

そこからの景色に、私は胸がギュッとなって

ニノミヤは「よしよし」って、また私の頭を撫でた。