極楽ハニー 9th【ars K.N】 (ページ15)

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292.茶封筒。ページ15

私達は相変わらずな日々を過ごしてた。

平日は仕事して、週末は一緒に過ごして

時々、私はカンナだったり地元の友達だったりと食事したり

ニノミヤも、例の彼らと遊んでたり

お互いそこまで干渉し合わず、でもこんな店行って来たよー...とかは話して。

ニノミヤは「大野さんの意外な独占欲がこえぇ」って何か楽しそうに笑ってた。

そんな日々の中で、ニノミヤがいつも以上に仕事量をこなしてる事は気付いてて

そして、何故か私にも「今出来る仕事は全部終わらせちゃってて！」って何度も何度も言って来る。

何でだよ...って思いつつ、出来る仕事を後回しにすると余計にしんどくなるのも分かってたから素直に従ってた。

「センパイ。ほい、これ」

ある日、普段より多い仕事量に疲れてグッタリしてた私のデスクにポンッと置かれた茶封筒。

原稿入れたりする時に使う、うちの社名入りの見慣れたそれ。

それを置いた張本人は、すぐに自分のデスクに戻ってもう仕事の電話をしてる。

「何これ...」

原稿チェックしろ...って事かな...

でもニノミヤがもうチェックしてるなら、私のチェックなんていらないと思うんだけど。

そう思いながら、茶封筒を手にすると違和感。
どうやら、原稿じゃなくて本が入ってるっぽい。

封筒を開き手を突っ込んで、中に入ってた雑誌を抜き出す。

「...え...？」

見間違いかな？

一回、雑誌を封筒に戻して振り返りニノミヤを見る。

「先生、頼みますよ？今回は絶対、締切守って貰いますからねぇ」

まるで恋人に話してるような甘ったるい喋り方で、電話中。

全くこっちの事なんか気にしてない。

もう一度、茶封筒から雑誌を引き抜く。

「...何で？」

派手で賑やかなその雑誌の表紙には、デカデカと

『沖縄』

の文字。

間違いようも無く、ガイドブック。
るるぶ。

「...何かの資料かな...」

封筒の中に、まだ何か入ってる。

逆さにしてみると、ポトンと付箋紙が落ちた。

意味が分からない。

意味が分からないまま、ガイドブックを開くと一ページ目にメモが挟まってる。

『行きたいトコ、食べたいモン、付箋貼っときなさい』

「...は？」

また振り返ると、ニノミヤは電話を終えて椅子ごとこっち向いてる。

「ニノミヤ、これは...？」
「沖縄」
「うん、それは分かるんだけど」

脚を組み、手元でペンをクルクル回しながら

「行くの。沖縄」

ニノミヤが、さらりと言う。

「誰が？」
「オ・レ・た・ち」

また、さらりと言った。