4.オトコとオンナ。 ページ4
短くなった煙草を灰皿に押し付けて、私はポーチに煙草とライターを入れた。
「じゃ、私先行くね」
「ねぇ、センパイ」
「何？」
「慣れた？こっちの仕事」
さっきまでの笑顔で煙草をふかしながら、ニノミヤが私を横目で見る。
「...慣れ...て...」
...なんか無い。
つい先日だって、女流作家に「女の編集者なんて当てにならないわ」なんて、女のアンタがそれ言っちゃう！？って事を言われて落ち込んだ。
僻みかもしれないけど、私が女だから良い仕事も回して貰えてない気までして来て腐り切ってる...ってのが本音。
「慣れねぇよなぁ、そんな簡単には」
「...え？」
「仕事なんて、簡単には上手く行かない。そんなモンだよ」
年下に自分でだって分かり切ってる事を言われて、カチンと来た。
「ま、アンタには分かんないもんね」
「は？」
「私の気持ちなんて男のアンタには分かんない」
キっと睨むと、ニノミヤは肺の中に溜まってたんであろう煙を全て吐き出し「分かるワケ、無いでしょ」と呟く。
「人の気持ちなんて分かんねぇって、エスパーじゃねぇんだし」
「......」
「けど、それとオレがオトコだってのは全然関係無いと思うんだけど」
口を少し尖らせてボソボソと話すニノミヤが、喫煙所の端っこにある自販機で缶コーヒーを二本買って、一本を私に投げた。
「『オレがオトコだから』ってのを言い出したら『センパイはオンナだから』って、オレは言いたくなるけど？」
「私が...女だから？」
「そ。オレだって『あー、オレがオンナノコだったらこの仕事上手く行くんだろうなぁ...』って思う事は何度もあったし」
でも結局はさ、と言いながらプルタブを開けてコーヒーを一口飲んだニノミヤがチラっと私を見る。
「どんだけ自分の利点を生かせるかだろ？オトコの武器にしても、オンナの武器にしても。力量だよ、個人の」
あまりにも、正論で
私にはまだ全然力なんて無いって言われてるみたいで
実際、力なんて無いけど...無いから、だから、悔しい。
「使えるモンは全部使えよ。ほら、その踵の高い靴だってオンナの武器なんじゃ無いの？」
ニノミヤが顎で私の靴をクイっと指す。
「愚痴や泣き言くらい、いくらでも聞いてあげるけどさ。オレはオンナだったとしても今と同じレベルで仕事する自信、あるよ？」
「...嫌味な奴...」
「だって、何でも出来ちゃうんだもん。カズくんってば」
ニノミヤは私が持ってる缶のプルタブも開けて「ま、飲めば？」と笑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3491人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2014年5月13日 20時
