極楽ハニー【ars K.N】 (ページ29)

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29.適度にサボる。ページ29

目の前のニノミヤは、おでんの大根をハフハフさせながら食べてる。

「...は...？」
「オレんち、すげぇ近所なの。徒歩圏内」

へー！そりゃ羨ましい！...って、いやいやそーじゃなくて...

「仕事出来る人ってのは、適度にサボれる人なんだよ」
「......」
「そんな、クソ真面目にガッチガチにやったって効率悪りぃよ？」
「......」

「あー！酒飲みてぇ！」って言いながら、シャンメリーを飲むニノミヤ。

「...ニノミヤ...何言ってんの...？」
「え？サボれる人が仕事出来る」
「そこじゃ...なくって...」
「あー、オレんち泊まれば良いんじゃない？ってトコ？」

それだよ、それそれ！
そこだよ、問題は！

「オレだってセンパイんち泊まったんだし、平気じゃね？」

...はあぁぁ！？無かった事にしたんじゃないの！？
今更、平然と言わないでよ！

「ね？泊まるトコあれば、気楽にサボりながら仕事出来るっしょ？」
「...ちょっ...え...？」

泊まれるって...
お泊りセットなんて当然持って来てないし

メイク道具は一応一通りあるけど、化粧水なんか持ち歩いてないし

...下着の替えだって無いよ...あっ！今日の下着って上下揃ってなかった気がする！

って...私何で下着の心配してんのよ！！

「ンフフ、ま、それは冗談だけどさ」
「...は...い？」
「終電は気にしなくって良いから」

待って待って、何が冗談？
どれが冗談？
冗談なのに終電は気にするな...って、全然意味がわかんないんだけど...

「車で送ったげるよ」
「...え？」
「オレんちの駐車場までは歩いて来て貰うコトになっちゃうけど」

今度は焼き鳥を口に運び、片頬を膨らませながら「無料のタクシー、しかもイケメンドライバー付きに乗れるんだから良いでしょ」って笑う。

顔が一気に熱くなる。

年下の冗談を本気で真に受けた自分を呪いたい...。

「暖房、ちょっと緩めよっか」

私が精神的にグッタリしてると、ニノミヤが口に焼き鳥の串を咥えたまんま立ち上がって空調の調節パネルを操作し始めた。

「ニノミヤ、暑いの？あ、おでん食べたから？」
「オレ？オレは別に暑くないけど...」
「え？」

戻って来たニノミヤが、向かい側じゃなく私の隣に腰を下ろす。

「センパイ、顔赤いからさぁ」

私の顔を覗き込み「暑いのかと思って」なんて、ニノニヤはニッと笑う。

「はい、これ飲んでクールダウンして」

シャンパンの偽物が入った紙コップを手渡されて

思わず一気飲みしてしまった。