極楽ハニー【ars K.N】 (ページ11)

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11.裸足のバカ女。ページ11

ソファから立ち上がると、アルコールとさっきまでの恐怖で脚がふらつく。

「そのまんま、裸足でおいで」
「え...でも...」
「そんなフラフラで、こんな靴履けんの？」

踵の部分を摘まんで持ってるパンプスをユラユラと揺らして私に見せる。

「それは...」
「大丈夫だよ。地下の駐車場に車停めてるから、フロントもロビーも通らなくって良い。このフロアから直行で地下まで下りれるからセンパイが裸足でも誰にも見られねぇよ」

ニノミヤは床に置いてた私の鞄も持つと、「帰ろ」って少しだけ笑った。

ストッキングに包まれただけの足で部屋を出て、エレベーターで地下まで降りる。

スタスタ歩くニノミヤについてくと、そこに黒いあんまりニノミヤのイメージでは無い車があった。

ニノミヤがその後部座席のドアを開けて、私の鞄とパンプスを置いてすぐに閉めて

「ほら、乗って」って、助手席のドアを開ける。

「...でも...」
「そんな顔したオンナノコを置いて帰れる程、オレ悪魔じゃないけど？」
「ありがと...」
「はいはい、どーいたしましてぇ」

乗り込むと、静かにドアが閉められる。

車の中は、ニノミヤが使ってる香水の匂いが少しだけ、した。

「ねぇ...何で...？」
「何がよ」

運転席に乗って来たニノミヤに訊く。

「何で...来たの...？」
「あぁ...喜多川先生に会うって言ってたからマズイかもなーって思って」
「え...？何それ...」
「あの人、ちょー女癖悪いから」

咥えた煙草に火を点けて「もう何度尻拭いしたかワカンネェよ」って煙と一緒に吐き出す。

「オレ結構長い間あの人の担当だったんだけど、煮詰まると火遊びすんの。でも、一応あの人世間では愛妻家になってんだろ？」
「...そうだね...」
「だから、イメージ守る為にオレ色々やったんだよ。もちろん今回みたいに奥さんにバレないように...ってのもね、何度も」

眉間に皺を寄せたニノミヤが、私を見た。

「正直、オレの仕事って何なんだろうって思ったよ。オレだって、全部納得してやってるワケじゃ無い。だけど、それが仕事なんだって言われたらするしかねぇし」
「...」
「でも、センパイがやろうとしたコトは仕事じゃねぇよ」

そんなの...分かってる...

...違うな...分かって無かった。

仕事が取れるなら、それで良いのかもしれないって思ってた。

「ごめん...」
「オレに謝んなよ。謝るなら怖い想いさせた自分に謝ってやれば？」

口角を緩く上げたニノミヤの目を、私はやっと見れた。