19.おはヨン様。 ページ19
お偉い大作家先生のバレるとマズイ証拠は隠滅するクセに
だったら、この証拠も綺麗さっぱり消してってよ！
...なんて、思う。
苛立ってるのか何なのか、さっきから心臓が痛い程走り続けてる。
「...全っ然...覚えてない...」
好きな人とえっちできた(っぽい)のに覚えてないなんてあり得なくない！？
クセになるえっちとやらをした(っぽい)のに、全然記憶に無いなんてあり得なくない！？
クセになるかどーか、分からんわ！
だって覚えてないもん！
「もー...やだ...」
こんなチャンス、きっともう無いのにっ！
ニノミヤとえっちできるなんて、そんなチャンス絶対に無いのにっ！
...って...えっちできるチャンスを熱望してるって、完全に脳がオッサンだし...
ってか、私そんなにニノミヤとえっちしたかったのか...って事に自分でドン引きだし。
床に寝そべりグッタリしながら、壁に掛かる時計を見上げる。
「...あっ！仕事っ！！」
もし自分が大学生だったなら、このまんま床で打ち拉がれながら、もっかい寝る。
学校なんて行ける精神状態じゃないもん、あたし...なんて自分に都合の良い言い訳をして家から出ない。
だけど、そうも言ってられないのが社会人な訳で
私は痛む頭と、まだ整理のできない心を抱えながら急いで支度を始めた。
・
コソーッとオフィスの入り口から中を覗き、自分のデスクの後ろの席を見る。
「...まだか...」
そこにまだニノミヤは居なくて、ほんの少しだけホッとした。
のも束の間
「おはヨン様」
「っ！？」
背後から声を掛けられ、勢い良く振り返ると
缶コーヒーを飲みながら、片手を軽く挙げてるニノミヤ。
「おは...ヨン...」
って、それ聞いちゃったらあの置き手紙ホントにニノミヤが書いたんだって今更実感してしまって胸がジクジクして来る。
「センパイ、遅刻して来るかと思ったわ。起きれたんだ」
「...ニノミヤ...」
「ん？」
「ちょっと...来て」
ニノミヤの腕を掴んで、うちの会社の中にある社員用図書室まで連れて行く。
「どしたの、センパイ。ライブラリーに仕事あんの？」
「無いわ！」
「じゃ、読みたい本でもあって探すの手伝えって感じ？」
「この時間に人が居ない場所がここしか思い浮かばなかったから！」
私がそう言って腕を離すと、ニノミヤは口角をキュッと上げた。
「オレと、2人っきりになりたかったの？」
今度はフフッと小さく笑うニノミヤが、私の腕を掴んだ。
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2014年5月13日 20時
