空想男子アディクション【ars】 (ページ46)

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「俺も同じ事、考えてた」
「...え？」
「俺、JKだから」
「......え？女子高生？」

彼の胸の中で顔を上げると、彼も私の顔を覗き込んでフッて笑った。

「何でも無い。こっちの話ー」
「えー...？私には翔さんが女子高生には見えないんですけど...」
「フハッ！見えたら困るよ」

むぅ...ってなると、翔さんが優しく頭を撫でてくれる。

「お互い、寂しいと思ったらちゃんと言おうね」
「...翔さん...」
「ちょっとだけ我慢して、無理せず素直になって、家庭円満！」
「フフッ、はい」
「まぁ、智くんの受け売りなんだけどね」

翔さんが、もう一度ギュウって抱き締めてくれる。

幸せ。

この人との子供が今、自分のお腹に居るなんて嘘みたいに幸せ。

「あっ！こんなにギュウってしたらマズイ！？」

幸せに浸ってる私から慌てたように離れた翔さんが、私のお腹をジっと見る。

そして

「触っても...良い？」

上目遣いに訊いて来て、頷くと壊れ物に触れるようにソっと、ソォっとお腹に触れた。

「こんにちは...初めまして、君のお父さんです」

優しく語りかける。

「お母さんのお腹の居心地は良いですか？お父さんも入ってみたいです」
「フフッ...」
「君に会える日を、楽しみにしてます」
「......」
「君もお父さんとお母さんに会える日を楽しみにしてて下さい」

まだ、膨らんでも無いお腹を撫でる。

「僕らは、全力で君を守るから。安心して、出ておいで」

こんな台詞はまだちょっと早いかな、って照れ臭そうに笑った彼の表情に

もう、私の涙腺はバカになる。

「Aちゃん」
「...はい」
「俺はAちゃんの事も全力で守るから。安心して、お母さんになってね」
「......はい！」

泣いてるんだか、笑ってんだか、自分でも分かんない。

その後の翔さんは、張り切ってネットで『新米パパがやるべき事』みたいなサイトを熟読したり、名付けサイトを見て「読めない！」って最近の珍しい名前を見て困惑したり

「あー、Aちゃんに似てる子が良いなぁ」
「絶対に翔さんです！女の子でも男の子でも、絶対に翔さんに似て欲しいです！」

そこは絶対に譲れない私に、翔さんが大笑いしたり。

神様という神様、全員から祝福されたような笑顔になってるお父さんを

あと少しだけ、お母さんが独り占めさせて貰う事を

許してね、お腹に居る『私達のキミ』。

・・・END『空想アニバーサリー』・・・