明日の天気の話をしよう 7th【ars】 (ページ1)

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211.漫画。ページ1

どんな顔をするべき？

ディナー出勤する為に家を出て鍵を閉めながら、昨日の事を思い出して「うーん...」と考えた。

二日酔いの頭が、ちょっと痛む。

『聞かなかったことにして』って言われたけど、そんなのやっぱ無理な話だし...ってゆーか一晩経ってもガッツリ覚えてるし。

実は私のことを...なんて知っちゃったのに気まずくなったりしない？
だって昨日は告白された後、お酒飲んじゃったし。
酔ってヘラヘラしてたし、二宮くん。

だけど次に会う時はシラフな訳だし...

...でもまぁ、そんなすぐには会う事は無いか。
少女漫画じゃあるまいし。
私の人生は、そんなキラキラなハラハラに満ち溢れてはいない。

エレベーターのボタンを押して、ボーッと電光表示の数字が降りて来るのを眺める。

まだ昨日の今日で頭も心も整理出来てないし、考えるのやめよ。

と、考えるのをやめたまさにその瞬間

「あ」
「にっ...！？」

開いたエレベーターの扉の向こうに、クロを抱いた二宮くんが居た。

漫画かっ！！
ご都合主義だよ、何だこれ！

思わずひるんでしまって、脚が動かない。

「乗らないの？」
「えっ！？」
「オレが『開く』ボタンを押してる事に気付かない？クロをわざわざ片手抱きにしてまでAの為に押してやってんの。乗るなら早く乗って」
「あ...はい」

あれ...？いつも通り偉そう。
ハニかむ様子なんて微塵も無い。

ペコペコしながらエレベーターに乗り込むと、クロがクンクン鼻を鳴らしながら私に顔を近付ける。

「クロー、こんにちは」

首の下を指でコソコソすると、クロは気持ち良さそうに目を閉じた。癒し。

「あげる」
「え？」

クロから視線を上げると、二宮くんが私に向かって拳を出してる。

その拳の下に手を出すと、掌にコロンと落とされたミントガム。

「A、酒臭ぇよ。臭い消しにどうぞ？」
「うそっ！？」
「うそ」
「はぁ！？」

あれー？やっぱ昨日のって夢だった？

二宮くんがあまりにも普通過ぎて、むしろいつも以上に意地悪で、昨日の事がそれこそ嘘みたい。

ミントガムを口に放り込む。

「A、そろそろ仕事かなー？って思ってさ」
「え？」

一階に着き、エントランスを抜けて外に出る。

「この時間に散歩行けば会えるかもって狙ったら、ホントに会えた」
「...狙っ...た...？」
「ンフフ。じゃあね、オレ今日はあっち行くから」

バイバーイ、ってロマドーとは逆の方向にクロと歩いて行く後ろ姿を

私は呆然と見送った。