明日の天気の話をしよう 7th【ars】 (ページ27)

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237.意地悪。ページ27

驚いたのは

櫻井さんに頭を撫でられた事よりも、それを二宮くんに見られた事の方に心臓がドキンとしてしまった事。

その事に自分も戸惑って、余計にドキドキが酷くなる。

車の外では、立ち上がった二宮くんが階段をズンズン降りて来てる。
むぅぅ...って顔して。

「あ、さすがに今のはちょっと意地悪だったかな...」

櫻井さんがそんな彼を見て、呟いた。

「...櫻井さん...」
「ん？」
「彼女が居るのに、こーゆーコトしたら駄目です」
「えっ！？ハハッ！そっかー、そうだよなぁ」

眉を下げて、参ったなって顔して笑う。

「大人のイヤな部分、諸々出しちゃったな」

フって櫻井さんが短く息を吐き出した時

コンコン、って今度は遠慮がちに窓がノックされた。

また張り付いてたらどうしよう、って恐る恐るそっちを見たら

彼は首を傾げるようにしてるだけで、張り付いては無い。

私を見てる本当に捨てられたワンコみたいな目に、キュンとする。
何だろうこれ、母性本能？

「ほら、彼が待ってるよ？」
「...はい」
「行ってあげなきゃ」
「...はい、そうします」

私が言うと、櫻井さんは優しく笑った。

ドアを開けて、車から出ると

冷たい風がヒュウっと吹いて、二宮くんはこんな寒い中私を待っててくれたの？って思ったら、またキュンって胸がイタイ。

寒さで二宮くんの鼻が赤くなってるのも、スンって鼻を啜ってるのも、私を待ってたからなの？って思ったらギュウギュウって胸がイタイ。

「...もう...何やってんの...？」
「うっさいよ」

吐き捨てるように言った二宮くんが、私の手首を掴んで「うっさいよ」ってもう一度同じ事を言って私に背中を向けた。

そして手首を引っ張ってエントランスの方へグングン進む。

「ちょっ...！ちょっと待って！」
「待たない！」
「私、まだ櫻井さんに挨拶してない！送って貰ったのに！」
「......」
「ね、ちょっとだけ待ってて...？」

階段を二段昇った所でやっと立ち止まって振り返った二宮くんは、ちょっと考えるような顔をして

「...分かった」
「うん」
「でも、これは離さなさいよ」

手首を掴んでた手を、スルリと私の掌まで下ろしてギュっと握って来た。

私は二宮くんと手を繋いだまま櫻井さんの車に戻る。
私の2歩位、後にいる二宮くん。

櫻井さんが助手席の窓を開けてくれたから、そこから中を覗くと

彼はさっきも見たハンドルに腕を乗せてるあの超イケてるポーズで、私達を見てニィって笑った。