明日の天気の話をしよう 6th【ars】 (ページ15)

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190.遊び道具。ページ15

二人で屋上を後にして、階段を降りた。

二宮くんちの前で、借りてたパーカーを脱ぐと体がヒンヤリする。

「これ、ありがと。あったかかった、裏起毛」
「ん、どーいたしまして。裏起毛は正義」
「お団子もありがと。明日の朝ご飯にして、またタッパー返しに来るから」
「ま、いつでも良いよ」

ふわぁ、と大あくびしながら応えた彼がドアに鍵を差し込むと

部屋の奥から「ワンッ」ってクロの鳴き声が聞こえた。

ドアを開けた瞬間、二宮くんの脚に飛び付く小さな体。

「ただいま、クロ。ごめんね、一人ぼっちにして」

クロを抱き上げ、甘ーい声で囁く。
さっきまで私のほっぺをグイグイ挟んで馬鹿笑いしてた人と同一人物だと思えない。

「ホント、二宮くんってクロだけには甘いよね」
「オンナノコにも甘いよ？」
「わー！どこがっ！ドSでしょ！意地悪でしょ！」
「うっさいなぁ。Aはまだ知らないだけ」

腕の中でモゾモゾしたクロを抱き直して、そのおでこにキスをした横顔は

確かにこんな顔で見つめられたら、女子は簡単にとろけちゃうんだろーなーって顔で

何だか妙に、その顔と目を合わせるのが怖かったから「じゃ！おやすみ！」ってバイバイしてエレベーターへ向かった。

「Aー」

お団子の入ったタッパーを胸に抱きしめたまま振り返る。

「また、付き合ってくれる？」
「...え？」

クロを抱いてるから両手が塞がってる二宮くんが、顎でクイッと上を示した。

思わず、つられて上を見上げてしまう。
廊下の無機質な天井が見えた。

「屋上」
「良い...けど、二宮くんだけの秘密基地なんでしょ？」
「んー...1人も良いんだけどねー...」

ほっぺをプクプクさせてた二宮くんが、プシュッと口から空気を吐き出してニッと笑う。

「2人も良いなぁと思ったから。A、面白いし」
「...良い遊び道具が出来たと思ってんでしょ」
「でも、遊び道具だって選びたいよ？オレ」
「え？」
「つまんないのは、いらないもん」

綺麗に上がった口角は、その角度を本能が記憶してるかのように完璧に『可愛い』高さにある。

なのに、その上にある目はやけに男っぽい。
この人の場合『目力』とかじゃない。
力の抜けた視線が、色っぽいんだ。

「Aはオレのおもちゃ」

言葉の選び方がえろいのは、基本性能なんでしょうか。

「二宮くんは猥褻物陳列罪でそろそろ逮捕されるね」
「え？何も出してないのに？」

彼は不思議そうに視線を落として自分の股間を見た。