明日の天気の話をしよう 5th【ars】 (ページ6)

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146.目覚めのチャイム。ページ6

「俺ね、ニノの前なら泣ける...って言ったらキモいかもしんないけど」
「ううん」
「...失恋、した時もさ、グズグズになってる俺にバスタオルだけ渡して自分は漫画読んでんの」

失恋...その言葉に胸がチクチクと痛む。

「Aちゃんも、何かあったらニノんトコ行ったら良いよ」
「...え？」
「一人じゃ寂しいけど、誰とも話したくない時とかちょーど良く放置してくれるから」
「そうなんだ」
「俺のニノ、貸してあげる」
「あー、その言い方は誤解されても仕方無いヤツだよ？」

フフッて笑ったら、相葉くんも「そう？」って笑った。

「じゃ...私、そろそろ帰ろうかな」
「うん。あ、じゃあ俺はニノんち行こっかな」
「こんな時間から？」
「電気点いてたからアイツ起きてるもん」
「あ、そっか」

一緒にオートロックをくぐって、エレベーターに乗り込む。

「Aちゃん」
「...ん？」
「Aちゃんも...無理しないで？」
「......」
「しんどかったら、俺に話してね。あー...俺、放置は出来ないからウザいかもしんないけど」

相葉くんがほっぺをポリポリする。

エレベーターが二階について、扉が開いた。

「俺じゃ頼りないか、泣き虫だし」

私はううん、って首を振って外に出る。

「そんなコト無いよ、ありがと。もし相葉くんが居なかったらって思ったら...」

扉が閉まり始めたから、もう一度「ありがとう」って言って手を振った。

一人の部屋に帰ると、身体から力が抜けた。

ベッドにうつ伏せになると、一気に色々と思い出す。

シャワーを浴びる気にもなれなくて、メイクを落とすのも面倒になって

私はそのまま目を閉じた。

・

目が覚めたのは、しつこいチャイムに気付いたから。
外は明るくなってる。

「......んー...誰...」

ピンポン、ピンポン、ピーンポーン

「...うっさい...」

転げるようにベッドから出て、玄関のスコープを覗くと

まだチャイムを押し続けてる、二宮くん。と、クロ。

チェーンをして、ドアをうすーく開く。

「...どうしたの...？」

メイク落としてない顔は見せられない。

「散歩の途中で寄ったから。Aにお裾分けー」

ドアの隙間から丸っこい手が侵入して来て、その手にはパン屋さんのビニール袋。

受け取ると、手はスッと引っ込む。

「ちゃんと食えよ？じゃーねー」

それだけ言うと、彼の足音が遠ざかってった。

その場で袋の中を覗く。

「...クロワッサン...」

焼き立ての良い匂いが、鼻を擽った。