明日の天気の話をしよう 5th【ars】 (ページ35)

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175.郵便物。ページ35

ある夜、仕事を終えマンションに帰って郵便物を取りに集合ポストに寄ったら

「あ...」
「お、うっす」
「うん、お疲れ様」
「ンフフ、べっつに疲れてねぇけどなー」

自分ちのポストから郵便物を出してる二宮くんにバッタリ会った。

彼は、封筒やハガキをマジマジ見て必要無いと分かればそこにあるゴミ箱に破って捨てる。
チラシの類は見ることもせず、容赦無くポイポイ。

私も自分ちのポストを開けて、まだ届く親戚への郵便物を自分に届いてる物を確認する。
チラシは...一応、持って帰ってからチェックして捨てよう。
ピザ屋さんのとか、残したいし。

「あ...」

小さく呟いた二宮くんを見ると、一枚のハガキを見たまま動きが止まってる。

「どうしたの？」
「え？あぁ...うん」
「呪いの手紙？三日以内に誰かに送らなきゃ...ってやつ」
「うん、次はお前に送りつけるわ」
「やーめーてー！」

冗談を言ってるはずなのに、彼は眉間に皺を寄せたまま。

「え？本当に呪いの手紙？」
「フハッ！ちげぇわ」

二宮くんが、こっちを見てやっと笑った。

「こないださぁ、父ちゃんに用があって実家にちょっと寄ったのよ」
「うん」
「そん時に亮と...あ、弟な？亮と遊んでやったんだけど、アイツ今度学校で家族に手紙を書く授業があるって話してて」
「...あ、もしかして...」
「うん。亮から手紙来た」

何だか微妙な表情をしてる。

「オレなんかじゃなくって、父ちゃんとか百合子さんに書けば良いのに...」

またハガキに目をやった彼は「オレにはオレの考えがあんのになぁ」って、困ったように微笑んだ。

「ん」

そのハガキを私に差し出す。

「え...見ても良いの？」
「うん」

それを受け取ると、小学生らしい文字が並んでる。

『おにいちゃん、このあいだはあそんでくれてありがとう。

たのしかったです。

もっとおにいちゃんとあそびたいです。

だから、おにいちゃんといっしょにすみたいです。

はやくかえってきてくれたら、うれしいです。』

「オレは、一人前になるまで帰らねぇって決めてんのにさぁ」
「うん」
「何を勝手なコト言ってんのよって感じだよな」

フっと笑った彼に、ハガキを返す。

「可愛いね、亮くん」
「オレには負けるけどな」
「ホンット...照れ屋だよねぇ」
「何だと！？」

ムゥってなった二宮くんが、「でも...」って私から視線を外した。

「...嬉しいとか思っちゃったわ...」

ボソッと聴こえた、素直な声。

髪を掛けてる耳が赤くなってる。