明日の天気の話をしよう 5th【ars】 (ページ4)

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144.ミステリー。ページ4

「いっぱい喋ったから喉渇いちゃった」

右手のひらで右目、左手のひらで左目をグリグリしながら相葉くんが言う。

「すぐそこに自販機あるよ？」
「あ、そうだ！あるね！じゃーAちゃんにジュースご馳走したげるよ！」
「えー？やったー！」

ドゥパレのすぐ近くにある自販機まで二人で歩く。
飲料の自販機が二台、煙草の自販機が一台並んでる。

「あ...そだ。煙草...買い損ねたんだった...」

相葉くんが自販機を見て、思い出したように呟いた。

多分

その時、思い出した光景は二人とも同じで

でもそれはお互い口に出さない。

口を一文字にしたまま、相葉くんは自販機に小銭を入れてtaspoをピッとする。

カコン、と軽い音を立てて煙草が落ちて来た。

身体を屈めて煙草を取り出して、彼はそのまま隣の飲料自販機の前に立つ。

「あ、小銭無くなっちゃった」

お財布を見た相葉くんが、お札を投入口に入れると

自販機のボタンが全部光る。

「Aちゃん、好きなの押して！」
「うわー、どーしよっかなー」

私が悩んでたら、相葉くんが横から素早くコーラのボタンを押した。

「あと5秒で決めなかったら、Aちゃんは自動的にこのミステリーゾーンね！」
「やだっ！それ、やだっ！」

端っこにある『？』が描かれた缶。
おどろおどろしい字体で『ミステリー』って書かれてる。

所謂、何が出て来るか買ってみなきゃ分からない！な、ゲーム的な？
何か、そんなやつ。

いつもこれを見る度に「お金を出してまでこんな事する人って居るの？」って思ってる。私。

「俺とニノ、これめっちゃやんの！」

あ、こんな近くに居た。

「行くよー？ごー、よーん、さーん...」
「あぁっ！えっと、えっと...これっ！」

慌ててファンタオレンジのボタンを押す。

「んもぅ。つまんないなー」
「だったら相葉くんがミステリーに挑戦すれば良かったのに。あ、コレありがと！」

ファンタの缶を見せて笑うと、「どういたしまして」って相葉くんも笑う。
目尻に皺が、キュッて寄った。

「ねぇ、ミステリーって何が出て来るの？」
「んー？意外と普通にコーヒーとか」
「あ、そーなんだ」
「でも、たまーに破壊力すごいの出るんだよ！キンキンに冷えたおしることか！」
「うわ！何それー。マズイでしょ？」
「それがさ、また何故か美味いってゆーミステリー。新発見だよね、新世界だよ」

相葉くんがコーラの缶を開ける。

プシュッと音がして、少しだけ飲み口から泡が溢れた。