明日の天気の話をしよう 5th【ars】 (ページ1)

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141.君が抱えてるモノ。ページ1

一瞬、何を言われたんだか分からなかった。

「利用...？」

口に出してみたら、胸を鷲掴みにされたように苦しくて

もう、その言葉の続きを聞きたくないのに

相葉くんの顔をただ見上げるしか出来なかった。

私は今、どんな顔をしてるんだろう...。

「利用...って...私、を...」

もう、譫言のようにポロポロと言葉が漏れる。

「相葉くん...が...？」

マンションの住人が帰って来て、立ち尽くしてる私と相葉くんを訝しげに見てマンションに入って行く。

「Aちゃん、俺の話...聞いてくれる？」
「......」
「許して欲しい訳じゃ無い。だけど、...謝りたいんだ」

今から何を言われるか分からなくって、怖くって

これまでの相葉くんとの関係が、めちゃくちゃに壊れてしまうんじゃないかって

そう思ったら立ってるのも、やっとだった。

フラ...っと階段に座った私を見た相葉くんが、唇を噛んで辛そうな顔をする。

「うん...話、聞くよ...」
「......ありがと」

深く頭を下げて、彼は私の隣に座った。

「俺ね、静香さんから相談されてたの」
「...相談？」
「ん。相談」

相葉くんが、大きく息を吸い込む。

「翔ちゃんの事が好きだ、どうしよう、って...」

吸った息と一緒に吐き出さなきゃ、言えないような言葉だったのか

彼は言い終わると同時にハァ...と溜息も吐き出した。

「何かさ、相談受けてる内に自分がその子を好きになっちゃって、ってよくあるでしょ？」
「......うん」
「俺はそうじゃなくてさ。静香さんが桜に入って来た時からずーっと好きでね、だから仲良くなりたくて、いっぱい話して笑わせてってしてたらさぁ...」
「......」
「何か、『良いお友達』になっちゃってたっぽい」

アハッ、って笑った声が行き場を失くしたみたいに響く。

「仕事帰りにさ、話があるから二人で飲みに行こーなんて誘われて超浮かれてたんだよ？そしたら...話って、それなんだもん」
「...相葉くん...」
「でもそこで俺は静香さんが好きなんだ！なんて言えなくってさ...結局、俺が選んだのは相談でも良いから静香さんに頼って貰える存在になる事だった...」

相葉くんの横顔を見ると、長い睫毛が震えてて

見たらいけない気がして、目を逸らした。

「静香さんの隣が俺のモノにならないなら、せめて...一番寄り添える相手になりたかったんだ...報われないのに...バカでしょ？」

今まで聞いた事の無いような彼の声に、耳の奥が悲しくなった。