千夜一夜に降る君と描く物語【ars M.A】 (ページ8)

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魔人はソファに深く腰掛けて、クッションを抱いてるんだけど
そのクッションが赤いハートの形なせいで、何だかラブリーな仕上がりになってる。

「あ、って事はもう魔人さんの罰は終わったんだね？」
「え？」
「じゃあ、どうぞお引き取り下さい！」

私は立ち上がり、「玄関はあちら！」と掌で玄関の方を示す。

「あ、空から帰る？だったらベランダはあちらです！...ってゆーか、そもそもどっから来たのよ！？」
「僕、帰らないよ？ってゆーか、帰れないの」
「...はい？」
「だって、罰は監禁だけじゃないもん。むしろ、ここからの方が大事」

どうゆー事でしょうか？

変わらずずーっとハートを抱き締めて、ちょっと唇を尖らせて喋る...おいおい、何で君はそんなにラブリーを前面に押し出すんだよ。

よく見ると私に向けられてる目は、黒目がちで綺麗なカマボコ型で

やだ！可愛い！

...いやいや、だめだめ。

この人、ちょっとおかしいんだから。
いくら可愛くても、おかしいんだから。この状況。

「ランプから出してくれたご主人様に、ご奉仕しなきゃいけないの」
「...奉仕？」
「そう」
「...あー...その奉仕、もうやったって事で良いよ。して貰ったって事にしたげるから帰って良いよ」

私が息を吐き出しそう言うと、「無理無理！」って魔人は両手を前に突き出して首を振る。

「僕、監視されてるんだもん。魔法界から」
「ま...ほー...？」
「あ！さっきの質問の答えね、魔法界！僕、魔法界から来たの」

そんな質問しましたっけ？って自分でも言った事を忘れてた質問に時間差で答えられて、ポカンとしてしまう。

「ご奉仕しなきゃ、魔法界には帰れないからさ」
「...私の都合は聞いて貰えないのね...」

ってゆーか、奉仕って何よ！？

こんなホストみたいな男子に「ご奉仕します」なんて言われたら、良からぬ方向を想像するんだけど！？

「ご主人様」
「...なっ...何っ！？」

そんな突然、声のトーン下げないで！

魔人は、立ったまんまの私の手を引っ張り少し強引に自分の隣に座らせる。

ふわりと、甘い香りがした。

「今の自分に、満足してる？」
「...え...」
「必ず、ご主人様を満足させてあげるよ」

だから！
その台詞も、何か色々と想像するから！！

「僕が、望みを叶えてあげる」

カマボコ型の目が、キュっと弧を描いた。

長くて綺麗な指が、私の髪を梳くように撫でた。