ん ページ2
「フリーな...マーケットでしょ？」
私が言うと、彼は「って事は？」って微笑む。
「自由な市場...？」
今まで一度もそうだと信じて疑問にも思ってなかった事を素直に答えると、ゲラゲラと笑われた。
「ブッブー。残念、不正解」
「え？...だって、フリーですよ？」
「フリーはフリーでも、フリー違いなんだわ」
「フリー違い？」
印象的なホクロがある顎をスルリと指で撫でた男性は、その指で長い前髪を耳に掛けた。
「自由のフリーじゃなくって、蚤のフリー。だからフリーマーケットは『蚤の市』って意味だよ」
「...あぁ！蚤の市！」
蚤の市！それ、聞いた事ある！
へぇ、そーだったんだ。
「ま、でもここ...えっとニッポンだっけ？ニッポンでは『自由市場』って意味もあるっぽいけどな」
「...え？お兄さん、日本人じゃないんですか？」
パっと見る限り、完全に和風なお顔立ちなんだけど。
和服とか、めっちゃ似合いそうなんだけど。
「んー...ニッポン人ではねぇな。似てるけど、顔の系統は」
「へぇ...アジア系なんですね」
「アジア...でもねぇんだけど、ま、良いや」
「ってゆーか日本語、めっちゃ上手いですね！」
「言語はどこでも順応できんだわ」
「ほ...ほぉ...」
...サラっと凄いコト言ったな、このお兄さん。
「で、蚤の市って本来は古美術を売るマーケットなんだよな」
「そうなんですかー、ふーん」
「ってなワケで、お嬢さんにコレをと思って」
彼は自分の背中に隠してたらしい古びた『古美術品』を私の目の前に差し出した。
「何ですか？これ。あ、カレー入れるやつ？」
「は？何だそれ。ランプだわ、普通分かんだろ」
「普通、分かんないですよ。こんなランプ、今時使いませんもん」
あ、でもアレだ。
アラジンと魔法のランプ。
アレに出て来るみたいな、真鍮で出来たランプ。
「コレをさ、お嬢さ...」
「ちょっと待って！」
「え？」
「やっぱり押し売りじゃないですか！あっぶなー...そんな得体の知れないモン、いくら吹っかけて来られるか分かんない...」
私はギリギリの所で気付いて、しゃがんだまんまちょっと後ろに下がる。
そして立ち上がろうとした時、彼はクフフッと笑った。
「売らねぇよ」
「...はい？」
「コレ、売りモンじゃねぇもん」
「...え...っと？」
彼は視線だけで周りを見回すと
「オレは、コイツに相応しいニンゲンを探してたんだよ」
よく分からない事を普通のコトのように言って、えらく男前に片目を閉じた。
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2014年12月5日 15時
