五十七 ページ7
『江戸にいつ来たの?』
「先日でございまする」
見舞いだと持ってきてくれた饅頭を口に入れた。久しぶりの甘いものに自然と頬が緩む。
たわいもない会話をしながらお互いの近況を話す。
話していくうちに知ったのは私が近藤さん達と江戸に来た頃に武州へ帰っていたらしい。
だが帰った先に私達が居らず、近所の人に聞いて私達が江戸へと旅立ったことを知り追いかけてきたのだという。それにしては会いに来るのが遅くはないか?
「その間にも修行してたのでござりますよ」
何かをはぐらかすように、隠すように言われたからジッと見つめていれば照れる〜‼なんて巫山戯るから一発ぶん殴った。
ドタンッと音を立てて床へ伸びた蓮は本当に修行してきたのかと疑う。お尻を摩りながら起き上がる姿は間抜けすぎる。
『このあと近藤さん来るけど会ってく?』
「…いや、今はまだ。ただ…元気だとお伝え下さいまし」
浮かべた表情は険しく何かを考えているようだった。
__何か隠してる。
と直感でそう思った。
そもそも考えてみればおかしいのだ。
10年という長い間姿を消していた癖に何の前触れもなく目の前に現れた。しかも会話は所々逸らされるし、近藤さんにと会わないと言う。おかしい以外の何物でもない。
少し声を低くし『蓮』と呼べばバツの悪そうな表情を浮かべる。
「…必ず話しますから、もう少し待って下さいまし」
本当は聞きたくて仕方ないが、蓮の苦しそうな表情に言葉が出なくそれは肯定したことになってしまった。ただ蓮は一言だけ「伊東に気をつけるでし」と言う。何故かと口にする前にそれを遮られた。
「姫、誰かがきたでし」
病室の扉へ顔を向けるが、人の気配はないし開く感じもしない。
首を傾げながら視線を戻せばカーテンが風に揺れているだけだった。
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年9月30日 9時