百 side-T ページ50
ーーー土方side
「A」
この件は明日以降に調べることになり話の区切りがついた為、近藤さん達と共にAの部屋を出たがアイツの様子が気がかりでこうして声をかけにきたのだが返答がない。
そっと中を覗けばAは起きているが俺が呼んだことに気づいてないらしく、文机に頬杖をつきぼーっと天井を見上げていた。
「A」
『んわっ…て、あれ十四郎ちゃん』
「呼んだのに気づかねェから開けた、悪ィ」
『大丈夫だけど…で、どうしたの?』
此方へ体を向けたということは入っていいということなのだろう。開けたそこに体を滑り込ませれば胡座をかいた。
「大した用はねェよ、ただ心配になってな」
『心配?』
「…俺らが部屋出てく時泣きそうなツラしてただろ」
図星だったらしいそれに目を逸らされた。
コイツは昔っから抱え込んでばかりだ。苦しいことも悲しいことも俺らに隠して笑って、自分のことなんざ二の次だ。我儘も愚痴も弱音も言わねェAに痺れを切らして声をかけたのがミツバの時だ。
初めて泣く姿を見てやっと吐き出せたんじゃねェかと思ったがあの時だけだったらしい。
手を伸ばし頭を撫でた。
「…お前の苦しみ少しは分かるつもりだ」
『それだけで十分だよ』
なんとも言えぬ共通点をコイツは知っていて、笑顔に隠したその裏にある葛藤も分からなくねェ気がした。
だが同じ妾の子でも境遇が違ェ。だからこそこれ以上の言葉が見つからなかった。
トンッと胸に暖かさが広がる。
『ねぇ、十四郎ちゃん』
「…んだよ」
『少しだけここ貸してよ』
「ったく、仕方ねェ」
背中に腕を回せば小さな嗚咽が。
( __少し、気にかけといてやるか。)
小さく震えるその背中を撫で続けた。
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年9月30日 9時