この世界の片隅に2【土方十四郎】 (ページ45)

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九十五ページ45

「A様、本日からお仕えする私の息子の蓮です」

「水島蓮でし、姫様これから宜しゅうでし」

あの時から蓮は意味のわからない口調だったが、私はやっと遊び相手ができて嬉しかった。

雪さんと遊ぶことは楽しかったし好きだったけど私は竹刀を振り回してる事が何よりも楽しくて、だが兄と離れた事により必然的に遠ざけられていたわけだからやっと握れる！と顔合わせ初日に蓮に稽古を申し込んだ。吃驚した顔をしていたが望むところだと受けてくれた。

当たり前だが私が負けた。忍び見習いにしかも私より10個も年上の蓮に勝てるわけもなく悔しいと思った反面、楽しかったのを覚えてる。

『蓮、勝ったからこれあげる』

そう言ってプレゼントしたのは黒いマフラー。蓮が来ると決まった時から用意していたのだ。

「いや、A様！こんなもの頂けませんでし！」

蓮は戸惑い首を何度も横に振ったが、姫様命令だ！と言えば渋々受け取ったがその目はキラキラとしていて嬉しいと思ってくれたんじゃないのか？と私まで嬉しくなった。

マフラーを首に巻いた蓮は今度こそ私にもきちんとわかるように笑顔になってお礼を言われた。

「姫」

『なーに？』

「貴方のことは命にかえても守るでし」

私にあの約束をしたのはこの日。ーーーそこから蓮へ私が恋心を抱くのに時間はかからなかった。

それからは雪さんと遊びつつも蓮と稽古に励む日々が続いた。生傷が絶えなく雪さんには死ぬほど心配された。

蓮が来てから半年、やっと私は蓮に勝てた。嬉しくて蓮に駆け寄れば凄いでしと頭を撫でてくれた。帰って報告しようと二人で屋敷へと戻れば、偶然見つけた母へ駆け寄る。

が、母は私に怪訝な顔を向けて言い放つ。

「気持ち悪い！近寄らないで！」

私の生活はこの日から一変した。