八十九 side-R ページ39
ーーー蓮side
姫は何も言わず、ただ頭を抱えて怯える。その頬には一筋の涙。姫がそれを取り戻したと分からせるには十分だった。ニタリと笑う凛太郎を睨んでいれば背後にある扉が開く。
「A!無事かィ!?」
「蓮!お前ェどうしてここにいんだ!」
姫の方を揺する沖田さん、そしてオイラを見つめて吃驚している近藤さんと土方さん。それを見て凛太郎は声を上げて笑った。
「局長に副長、そして一番隊隊長か。随分と妹が世話になっているようで」
「…オイ、Aあれ誰でィ」
「無視⁉ねぇ!なんで無視すんの⁉」
『…水瀬凛太郎、私の兄です』
姫が口にした言葉に息を飲む音がした。やはり、思い出してしまったのか。自分の不甲斐なさに唇を噛んだ。
「A…てめェ記憶戻ったのか?」
『…』
姫の目はただ土方さんを見つめただけだった。それで気付いたようで土方さんは舌打ちをし近藤さんは苦い顔をした。
「凛太郎…お主をここで殺す」
「ハッ、主人を殺すとはいい度胸してんじゃねーか!」
「姫、オイラに任せるでし」
「何無視してくれてんの⁉状況考えろよてめェ‼」
「その口とっとと塞げ死に損ないが‼!」
姫と近藤さんに名を叫ばれた気がしたがオイラは迷わずに足を踏み込む。刀同士がぶつかれば凛太郎は楽しそうに笑う。
腹に蹴りを入れられそのまま後ろに飛ばされるが衝撃はこなかった。目をやれば沖田さんが受け止めてくれたよう。
「…アンタ、何者なんでィ」
「真選組一番隊でお世話になっておりました松田一郎です。…まぁそりゃ仮の姿でしが、本名は水島蓮、そこにいらっしゃる水瀬A様の忍びでございまし!」
三人は目を丸くしたがオイラが何をしていたかをすぐ理解してくれたようだった。その顔を確認したオイラは姫を、そして姫の好きな真選組を守る為背後にいる沖田さんを姫達の方へ突き飛ばす。
目の端に光っていた銀色はオイラに向かって飛んだ。
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年9月30日 9時