八十七 ページ37
「本当、通り雨ですね」
『…松田くん』
彼が笑ったのも束の間、ぞろぞろとまた隊士達が増える。一体何人が裏切ったんだこりゃ、これでも一緒に刀振るってきた仲間な訳だから結構心痛むんだから。なんて心中も知らぬそいつらは容赦なく刀を向けた。
自然と松田くんと背中が合う。
『アンタなんでいんのよ!』
「何となく?」
『何となくでここにいんじゃないわよ!ここ戦場だぞお前‼!』
「何となくいたら巻き込まれたんですって〜」
『気の無い喋り方すんなうざい‼兎に角数は欲しい、戦え馬鹿‼』
それを合図に床を蹴れば松田くんもそれに続いた。
握り締めた二本の刃は赤を纏い斬り裂いていく。出来た赤い道筋に通り雨といわれる理由が分かった気もする。
そんなことを思っていれば松田くんが此方へ飛ばされた。それを受け止めればすみませんと一言。
『そんなんじゃ一番隊の名が廃るんじゃねーの』
「…煩いですね、反応が遅れただけっすよ」
『舐めた口聞いてくれんじゃん、アンタ後で切腹ね!』
「望むところだよ!補佐官殿!!」
お互いの背後に迫っていた隊士を斬り伏せれば背中を押し合い残る隊士の中へ入り込む。一本は腹を搔っ捌きもう一本は胸を貫く、それを抜けばその後ろへ刀を投げ男の首を捉えれば赤が噴き出し倒れた。
倒れている隊士達の背を踏み壁に刺さるそれを抜けば背後に迫った殺気を叩っ斬る。
ドサッと倒れれば松田くんが目の前で最後の一人を斬った。
『何となくでここにいんなよ、馬鹿が』
「俺がいなかったらとっくにおっ死んでた癖に」
こんなに突っかかってくる隊士は初めてで目が合えば吹き出してしまった。
が、そんな雰囲気を壊すように車内が揺れ電気が消える。何事かと音の方へ足を向ければ後ろから殺気。振り向けば見慣れた黒、隊服だった。
それが地面に落ち、晴れた視界の先から銀色が飛んでくる。松田くんが庇うように私の前に立つがそれは彼の頭を掠めるだけだった、が。
『な、んで…』
ふわりと目の前に見慣れた赤色が舞った。
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年9月30日 9時