八十五 ページ35
鴨さんに呼ばれて私と総悟くんは今電車に揺られてる。隊士募集の為に遠方へ向かうのだとか。後方車両でぼーっと外を眺める。
「呑気に景色見てんじゃねェよ、てめェの目には何も映ってねェだろ」
『人が何も見えてないって言いたいのか、斬り殺すぞ。あと』
瞳孔開いてると言えば返ってきたのは舌打ち。顔には出さないが彼には珍しく焦っている。無理もない、自分の大将の首に刀がかかってるってのにここで見張りを任せるとか言われ近藤さんから引き離されたわけだ。近藤さんもお前らなら大丈夫だなとか笑う始末だし。
今すぐにでも動きたい。けれどすぐに動けば近藤さんの命も隣にいる総悟くんの命だって危ない。なんたってこっちの人数二人だもんね、下手したらここでおっ死んじまうわけだ。けどそんなことは気にしていない。今あるのは近藤さんを助けるという一択だけ、自分の命なんざ二の次だ。
『とりあえずさ、ちょいと待ってて』
彼を置いて車両を進む。近藤さんと鴨さんがいる車両の前の扉までくれば持ってきたそれを取り付ける。見つからないよう、慎重に。
そっと覗けばバレていない様子。適当に見回ったフリをして総悟くんの元へ戻り、スイッチを握らせれば勘のいい彼は私が何をしてきたのか気づいたらしく右口角が少し上がる。
『近藤さんを救出する大役は譲ってやるよ』
「安心しろィ。お前ェと違って俺ァ優秀だ、ヘマはしねーよ」
『一言多いんだよ、クソガキ』
「うっせェ、処●が」
『そろそろぶち殺すぞお前』
緊張感のある場だってのに私達は相変わらずだった。総悟くんの手が頭に乗りそのまま撫でられる。その手が少し震えていたので掴んでギュッと握ってやれば途端、震えは止まる。
「…絶対ェ死ぬんじゃねーぞ」
『お互いにね』
そんな約束をし総悟くんは背中を送り出しながら誓う。
『一度捨てた命、ここで近藤さんの為に使わせて頂きます。』
97人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:翡翠 | 作成日時:2018年9月30日 9時