八十二 ページ32
逃げたザキちゃんの背中が見えたが、その背からは刃が顔を出している。その刀を持つのは___鬼兵隊の一員、河上万斉。
「伊東…Aちゃん…貴様らっ…」
「山崎くん、君達のように斬り合いばかりじゃ世の中は変わらん」
利口になれだの、攘夷志士とはうまく付き合っていけるはずだのよくわからないことを言う。正直理解したくなんかなくて聞いてるフリを突き通す。
「君の上司のようなやり方では真選組はこれ以上強くはならん」
お前のやり方で真選組が強くなるとも思わないけど。なんて言葉は拳と共に握り潰す。
そしてこの人は言う。
「伊東鴨太郎が器を天下に示す為の箱舟となってもらう」
以前、鴨さんから生い立ちを聞いたことがあった。
このご時世のならではの問題であるそれを聞いた時は酷く可哀想だと思った。二番目だからって愛されないなんて。
いつしかそれは歪んでしまったのだろう。今この男は、自分を認めてもらえるならなんでもするというとんだ自己中男に成り下がってしまったよう。
這い蹲って進むザキちゃんの姿を見つめる。
「士道も節操も持ち合わせない空の器になんて誰もついていかんよ…
俺はあの人たちに…ついていかせてもらうわ……最後まで」
鴨さんは馬鹿にしたように笑ってザキちゃんの士道を馬鹿にする。自分の士道に乗れない者は敵ってか。呆れたものだわ。
鴨さんはザキちゃんには名誉ある殉職を与えようと彼は背を向けた。が、ついてこない私の名を呼ぶ。
『鴨さん、すみません。彼の最後…見届けさせてください』
「…そうか、君は彼と付き合いが長いのだったね。よかろう、その姿を見届けてやってくれ」
鴨さん達がいなくなり、万斉がザキちゃんへ刀を振り上げた。
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年9月30日 9時