六十一 ページ11
『A〜!!』
「ぐはっ」
お気に入りの団子屋までの道を歩いていれば前から朱髪に抱きつかれた。なんとか受け止めたが思い切りお腹に入った、痛かった。だが見上げられたその顔に痛みなんてもんはどうでもよくなった。
「やっと退院できたアルか?」
『うん、心配かけてごめんね』
「心配するなんて当たり前だロ?Aは私の大事な友達ネ」
武州から出てきて周りにいたのは男ばかりで、それも皆友達と呼べるものではなかった。何方かというと同志、みたいな。
物心ついた時から刀を振り回していた私を友達と言ってくれたことが本当に嬉しかった。
ご飯は?と聞けば卵かけご飯を食べたと返ってくる。…またあの男はご飯を食べさせていないのか。こんな育ち盛りの女の子…いや、この子はその類を大きく超えてるが。
神楽ちゃーん!と眼鏡くんが走ってくる。
「あ、Aさん!お久しぶりです、お怪我の具合は…」
『もうすっかり。心配かけたわね』
新八くんの頭を撫でてやれば照れ臭そうに笑う。彼にも同じことを聞けば卵かけご飯と返ってくる。…育ち盛りの男女に卵かけご飯しか与えないなんて
__腐ってんな、あの天パ。
『今から団子屋行くんだけど二人も一緒にどう?』
「行くアル!団子食べたいアル!」
「あの、それは申し訳ないというか…」
「新八ここはAの好意に甘えべきだロ」
「いやでも…ね」
この子が心配しているのは他でもない神楽ちゃんの暴食だろう。以前十四郎ちゃんがたかられた時にはあり得ない額を払わされて財布が空になったとか言ってたっけ。
でも私はそんなケチな人間じゃないわけで。
『私が一緒に食べたいだけだから遠慮しないで?』
「じゃあ…遠慮なく…」
「きゃっほーい!」
止めていた足を団子屋へと向けた。
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年9月30日 9時