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部屋の側面に額縁がかけられていた。その絵の主は、不在のようで居ないが、それが何だか心をホッとさせた。
そして目の前の重厚な机の上を覗くとまだ書き途中の手紙がぽつんと残っている。
美しいバランスで書かれた文字は、"
『やっぱり…か』
そんな声を漏らしては、私は足早にこの部屋から出た。私が部屋を出る直前。
肖像画に人が戻ってきたような気がしたが振り返ることなく、ガチャン、と音を出して閉めた。
そしてまた行く宛てもなく昼食を待ちながら、歩き出す。
片手で壁をなぞりながら、物思いにふける。
どうやってヴォルデモートの所へ行こうか。死喰い人としての仕事をできる絶好な機会。
ここで信頼してもらえれば、後のことがスムーズに進むはず。さて、どうしたものか。
私の片手が廊下のタペストリーに触れた時、ビリッと静電気が来たような気がして、堪らずそのタペストリーを見つめる。
タペストリーは古色蒼然としていた。色褪せ、ドクシーが食い荒らしたらしい跡があちこちにある。
しかし、縫い取りをした金の刺繍糸が、家系図の広がりを未だに輝かせていた。そう、未だに……
時代は、中世にまで遡っている。タペストリーの一番上に、大きな文字で次のように書かれていた。
高貴なる由緒正しきスリザリン家
純血よ悠久なれ
忌々しい文字だと思った。樹木のように強い繋がりで繋がれた金の刺繍糸は、勿論私にも繋がっていた。
しかし、所々抹消された人が見えた。マグルをサポートしたり、純血について少し批判をしたためだろう。
長い金の刺繍糸の始まりは、やはり、サラザール･スリザリンだ。
『忌々しい……』
無意識に出てきたその言葉、空虚な廊下によく響いた。
幾重にも金の刺繍糸は、繋がり色んな純血な家柄と繋がっていた。そして私もまたシリウスと金の刺繍糸が繋げていた。
しかし、シリウスの所には、死去の日が加えられていた。
それにグッと喉から出る嗚咽を堰き止めて、ただ顔を歪まれることしかできない。
タペストリーは、威厳をもってそこに存在していた。そんな、長い廊下を私はまた歩き出す。
次に私が止まったのは、数分してからだった。少し開かれたドアから部屋を覗けば、そこには両親の絵がかかっていた。
それを見つければ、堪らずこの不遇を拭いとって貰うように部屋の中に入った。
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作者名：おにぎり食べたい | 作成日時：2021年3月22日 20時
