25 遺志と意志 ページ25
ベラトリックスは前に進み出て、2人の頭上に立ち、結ばれた両手の上に杖の先を置く。
ナ｢セブルス、貴方は、闇の帝王の望みを叶えようとする私の息子、ドラコを見守ってくださいますか？｣
ス｢そうしよう｣
眩しい炎が、細い舌のように杖から飛び出し、灼熱の赤い紐のように2人の手のまわりに巻きつく。それはやけに惹きつける煌めきを帯びている。
ナ｢そして貴方は、息子に危害が及ばぬよう、力のかぎり護ってくださいますか？｣
ス｢そうしよう｣
2つ目の炎の舌のようなものが杖から噴き出し、最初の炎と絡み合い、輝く細い鎖を形作る。
「そして、もし必要になれば……ドラコが失敗しそうな場合は……」と、ナルシッサが囁くように言うと、スネイプの手がぴくりと動いた。
ナ「闇の帝王がドラコに遂行を命じた行為を、貴方が実行してくださいますか？」
一瞬の沈黙が流れる。ベラトリックスは目を見開き、握り合った2人の手に杖を置いたまま見つめていた。
ス｢そうしよう｣
驚くベラトリックスの顔が、3つ目の細い炎の閃光で赤く輝く。舌のような炎が杖から飛び出し、他の炎と絡み合い、握り合わされた2人の手にがっしりと巻きつく。
縄のように、炎の蛇のように、巻きついていた。
トム｢僕はあまり、いい判断とは言えないと思うな｣
『それは、スネイプも思ってるだろうよ────だけど、ああ、するしかなかったんだろう』
顔を顰めてトムを見下ろし、静かにバレないように立ち上がる。
『今日のところは、スネイプに会うのはよそう。面倒事に巻き込まれるのは、ごめんだ』
ハリー・ポッターは、大きく鼾をかいていた。この四時間ほとんどずっと、部屋の窓際わに椅子を置いて座り、だんだん暗くなる通りを見つめ続けていたが、とうとう眠り込んでしまった。
冷たい窓ガラスに顔の半分を押しつけ、メガネは半分ほどずり落ち、口はあんぐり開けている。
ハリーの吐く息で窓ガラスの一部が曇り、それが街灯のオレンジ色の光りを受けていた。
街灯の人工的な明かりがハリーの顔からすべての色味を消し去っていて、まっ黒なクシャクシャな髪の毛の下で顔が幽霊のように見える。
部屋の中には雑多な持ち物や、ガラクタがばら撒かれている。
床には、梟の羽根や林檎の芯、キャンディの包み紙が散らかり、ベッドにはごたごたと丸められた上衣の間に呪文の本が数冊、乱雑に転がっていた。
そして、机の上の明かり溜まりには、新聞が雑然と広げられていた。
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作者名：おにぎり食べたい | 作成日時：2021年3月22日 20時
