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ベラ「ここに？マグルの掃き溜めに？我々のような身分の者で、こんなところに足を踏み入れるのは、私たちが最初だろうよ────」
しかし、ナルシッサは聞いていない。錆びた鉄柵の間をくぐり抜け、もう通りの向こうへと急いでいた。
ベラ｢シシー、お待ちったら！｣
ベラは、マントをなびかせてあとを追い、ナルシッサが家並みの間の路地を駆け抜けて、どれも同じような通りの2つ目に走り込む姿を見ている。
街灯が何本か壊れていて、2人の女性は、灯りと闇の間を走る。
獲物を追う追っ手のように、ベラは角を曲がろうとしているナルシッサに追いつく。今度は首尾よく腕を掴まえて後ろを振り向かせ、2人は向き合う。
ベラ｢シシー、こんなことしない方がいい。あいつは信用できない｣
ナ｢闇の帝王は信用していらっしゃるわ、違う？｣
「闇の帝王は、きっと……間違っていらっしゃる」と、ベラが喘いで言う。頭巾の下でベラの眼が一瞬ギラリと光り、2人きりかどうか辺りを見回す。
ベラ｢いずれにせよ、今度の計画は誰にも漏らすなと言われているじゃないの。こんなことをすれば、闇の帝王への裏切りに｣
「離してよ、ベラ」と、ナルシッサが凄む。そして、マントの下から杖を取り出し、脅すようにベラの顔に突きつけた。
ベラが嫌な高笑いをする。
ベラ｢シシー、自分の姉に？あんたにはできやしないわ｣
「できないことなんか、もう何にもないわ！」と、ナルシッサが押し殺したような声で吐く。声にヒステリックな響きがあり、そして、杖をナイフのように振り下ろすと、閃光が走った。
ベラは、火傷をしたかのように妹の腕を離す。
ベラ｢ナルシッサ！｣
しかし、ナルシッサはもう突進していた。追跡する者は手をさすりながら、今度は少し距離を置いて、再びあとを追っていた。
レンガ建ての家の間の人の気配のない迷路を、2人はさらに奥へと入り込む。
ナルシッサは、スピナーズ・エンドという名前の袋小路に入り、先を急いだ。
そびえ立つような製糸工場の煙突が、巨大な人差し指が警告しているかのように、通りの上に浮かんで見える。
板が打ち付けられた窓や、壊れた窓を通り過ぎるナルシッサの足音が、石畳にこだました。ナルシッサは、1番奥の家にたどり着く。
一階の部屋のカーテンを通してチラチラと仄暗い灯りが見え、屋根には黒い蛇がチラチラと舌を覗かせている。
ベラが小声で悪態をつきながら追いついた時には、ナルシッサはもう扉を叩いていた。
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作者名：おにぎり食べたい | 作成日時：2021年3月22日 20時
