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『どう？似合うかな』
死喰い人らしく、全身黒の服を着てトムに言葉を貰う。少し照れくさくなりながらも、しっかりとトムを見る。
トム｢まぁ、死喰い人らしく見えるよ｣
彼は至って冷静に少しにやりと笑いながら、言葉を吐く。それに私は慣れてしまったのか、微笑み返した。
最近の癖で髪の毛を手でかきあげる。準備も完璧。きっと必要なものは全部もっているはず。
彼は蛇になり私の首周りに巻き付き、ローブの中へと潜っていく。
『ヴォルデモートにバレないようにね。バレたらどうなるか分かったもんじゃない』
鏡の前にたって、額の傷から左目へと手でなぞる。なんとも言えない気持ちが渦巻き、曇った空の光が差し込む。
トム｢勿論｣
窓の外を見れば、曇天で気分が下がるような空が広がっていた。私の顔もそれを見て曇ってしまう。
『それじゃあ、行こうか』
その言葉を静かな部屋に漂わせるとトムが微かにローブの下で頷き、バシッと音を立てる。
胃が内側から引っ張られるのを感じながら、ギュッと力を入れて我慢する。
少し吐き気を感じた時、足が地に着いたのを感じて目を開ける。刻々と闇の中で不気味に広がる館に息を呑むことしか出来ない。
『ここにいるんだ────死喰い人が』
それにゴクリと唾を飲み込み、覚悟を決めて1歩1歩館の方へと進む。
微かな光は、なんの温かみもなくただ冷淡に私の顔を照らす。空気が重たい、それに顔を歪める。
館の扉を開けて、目の前の闇に突き進む。薄暗い廊下は、最早恐怖さえ感じさせる。
ビリビリとした空気感と私の足音だけがコツコツと響き渡った。
無意識にローブの下にいるトムを片手で撫でる。それにトムが私の気持ちに答えるように返事を返す。
緊張にしめ上げられて、全身の筋肉が古革のようにこわばり、首を動かしただけでも、ぎしぎし音を立てそうだ。
額の傷が徐々に痛くなる方に向かって歩く。そして私の目前に微かに漏れる冷徹な光が目に映る。
そして何やらまだ会合は、始まってないかのように死喰い人の談笑が小鳥の囀りのように小さく小さく、何者も刺激しないような声が耳に届く。
額の傷を触り、深呼吸をする。
大丈夫、きっと大丈夫。ヴォルデモートが求めるA･スリザリンを演じればいい。
それだけで事はうまく進む。
薄暗い廊下の中で、目の前の扉のドアノブをしっかりと握り、ギリギリと音を立ててゆっくりと押し広げた。
その音が囀りを止めさせ、やけに軋みが響く。
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作者名：おにぎり食べたい | 作成日時：2021年3月22日 20時
