24 ページ24
玉｢2万貫ですよ、2万貫。｣
金は外国では相場が跳ね上がるから、そこで還元すれば政府と対立する資金として支障ないな。
本当に蝦夷共和国を作る事が出来そうだ。
まず、そんな大金を鶴見中尉が部下と山分けをするわけが無い。
第1に分けるなんて考えは毛頭無いに違いない。
それに、それだけの先行投資があるならば、もっと金になる事や、大それたことができるはずだ。
例えば、日露戦争で大量に兵が死んでいった原因を作った上層部への反逆とか…。
有り得るっちゃ有り得る。203高地攻略などで多くの部下の命と引き換えに功績を残した第7師団だ。
僕もあの場で戦ったけど、あれは流石に悲惨すぎた。第7師団に限らず、他の師団も犠牲を払ったが、第7師団は段違いだった。
その損害の大きさに責任を感じた師団長の花沢中将は自害したと聞く。
それにその自害の件を兵士達に原因があるとした政府や陸軍本部は、英雄であるはずの第7師団を邪険に扱った。
まぁ、恨みを持つのも考えられるな。
しかし、もし本当に反逆が目的ならば···
『もしそれが本当なら日本や北海道が荒地になってしまう』
203高地や奉天会戦のような事を鶴見中尉は日本で繰り返す気か…？
それは流石に黙っちゃいられない。
『そうですか、いいことが聞けました。それではおやすみなさい、玉井伍長殿』
気色の悪い様な笑みを浮かべて、その場を急いで離れて何事もないように兵舎に入り込み、自室へと戻る。
自室へと向かう途中で尾形が目の前から歩いてきた。僕は何事もないように、知らんぷりをして尾形とすれ違う。
尾｢成功か？｣
無表情に言う彼に僕は静かに答えるようにして、頷き、自室へとドアノブを捻って中に入る。
一息ついてはベッドに座り込み、ポツリと呟く。
『2万貫ねぇ···第1師団の上官たちはこれを狙っているのか。』
そしてベッドの中に入り込み、寝付けずモゾモゾと動く。
もし僕なら、何に使うだろう。この2万貫を────
いや、仕事に私情を持ち込むべきではないな。それを嫌だと言うほどに、陸軍士官学校で習った。
陸軍士官学校で何もやらかさなければ、僕も運良く将校になっていたのに。
上等兵からスタートからだったからなぁ。今頃大尉になっていた僕がいるのかもしれない。
そんな馬鹿げた夢を見ながら目を閉じる。
夜は凛として静かな夜に、どこかで悲鳴が聞こえたように感じた。
ただ眠りに誘われた僕は目を閉じるばかりだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 48人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は尾形百之助オチですか？できれば尾形百之助オチでお願い出来ますか？あと尾形百之助を死なないで欲しいです。お願いします🙏続き頑張って下さい。応援してます。 (2022年12月14日 5時) (
レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
霧雨 - すごく好みです！ (2020年12月12日 12時) (レス) id: edd0868c2a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おにぎり食べたい | 作成日時：2020年11月22日 22時
