16 ページ16
翌朝、いつものように尾形と朝食を取っていると、宇佐美さんが僕の隣に腰を下ろす。
宇｢やだなぁ、尾形。僕をおいて新しい上等兵と一緒に食べるなんて｣
尾｢お前と食いたくないだけだ｣
宇｢じゃあ、A君とは食べたいんだ？｣
ニヤリと笑って尾形に聞く宇佐美さんは、どこか腹黒さが滲み出ているような気がした。
尾｢···やかましい｣
宇｢ふーん、図星なんだ。あっ、ねぇ二条くん｣
宇佐美さんはそう言いながら僕の顔を覗き込み、僕はビクリとして宇佐美さんの瞳を見つめる。
『······なんですか？』
宇｢そう怖がらないでよ。取って食ったりはしないから｣
尾｢取って食ったりしないだけで、虐めるだろ、宇佐美｣
尾形はそうぽつりと呟くとただ、食べ物を口の運ぶ。無表情のその顔に僕は横目で見る。
隣から宇佐美さんの視線を感じながら、カチカチになる。カクカクしながら食べ物を口に頬張る。
｢なぁ聞いたか？入れ墨の囚人は全部で24名だとよ。果たして何人生き残ってるんだろうな？｣
｢そうそう、それにのっぺら坊を知ってるのは、脱獄の指揮をした囚人たちの親玉だってよ。｣
そんな声が聞こえ、僕は聞き耳を立てて真剣な顔をする。この有力情報を逃す訳にはいかない。
｢その親玉ってやつは、おとなしい模範囚。ところがどっこい猫かぶってやがった。聞くところによると、三十数年前の箱館戦争で戦った敗残兵らしい、旧幕府軍の侍だ｣
｢でも、"そいつ"は戦死したはずだろ？｣
｢そう思われてるけど、新撰組鬼の副長 土方歳三は生きてるって噂よ｣
聞き耳を立て続けたがそれ以上の有力な情報が得られず、僕は平然を装いながら、口に運ぶ。
宇｢ねぇ、情報が漏れてると思わない？尾形｣
尾｢···俺の知るところじゃねぇーな、だけどあんなにペラペラ話すと鶴見中尉殿に殺されるかもしれないな｣
フッと鼻で笑うが、ここではそう簡単に人が死ぬのが普通なのだろうか？
宇｢ねぇねぇ二条君、僕と一緒に見回りしない？｣
ニコニコと効果音がつきそうなまでに愛嬌のある笑顔で僕の顔を見つめる。この人は何となく掴めない。
『見回り？』
宇｢そうそう、兵舎の周りの村を見回るだけのね。どうせいつかしなきゃいけないなら、僕とやってた方がわかりやすいでしょ？｣
『まぁ、確かに···』
確かにそうだなぁ。隙を見つければ見回りの時間に諜報活動の報告もいつかは出来るかもしれないし···
だけど、宇佐美さんの2人きりはなぁ。怖いって噂もあるし···
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 48人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は尾形百之助オチですか？できれば尾形百之助オチでお願い出来ますか？あと尾形百之助を死なないで欲しいです。お願いします🙏続き頑張って下さい。応援してます。 (2022年12月14日 5時) (
レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
霧雨 - すごく好みです！ (2020年12月12日 12時) (レス) id: edd0868c2a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おにぎり食べたい | 作成日時：2020年11月22日 22時
