9話 ページ10
『清光兄さま………!安定兄さま……!』
しっかりと存在を確認するように抱き締める。華奢な体が折れてしまいそうなくらいで、それくらい強く抱き締めた。
Aも小さい、でも思い出の頃よりかは随分成長したその腕で僕達をしっかり抱きしめてくれる。
「ほんとに…本当に、Aだよね…?」
『はい…』
「A…ずっと会いたかったんだよ…っ」
そう言うとAは私もです…、と嬉しそうに微笑みながら涙を溜めた瞳で僕達を見つめた。それはあの頃とどこも変わらない笑顔。少しはにかむ様に、まるで花が綻ぶように可憐に笑う。でもどこか艶やかな雰囲気を持って見えるのは幼い時より成長した彼女の姿がそう思わせるのだろうか。
「……それにしてもさ成長したね、A。」
『そうですか?』
僕と同意見を携えた清光が尋ねた。Aはこてん、と首をかしげるとでも…と控えめに言葉を発する。
『……清光兄さまと安定兄さまの方が、素敵になりすぎです…』
…そんなことを恥ずかしそうに目元を赤らめて言われて我慢できるわけがないだろう。
たまらなくまた抱きしめると腕の中で少し彼女が暴れた。
「全く、Aは本当に可愛すぎるんだから」
「もう大好き!」
『ちょっ、兄さま、』
「………あの、お前らちょっといいか。」
兄妹水入らずの間に割って入った声。折角良いところだったのにと振り向けば目に入った主と光忠の姿。やばい、これは完全に忘れてた。
「えっ!主いつからそこにいたの!?」
「初めからいたわ。」
慌てる清光に呆れ顔の主はため息をつくと、まあ何だと頭をガシガシ掻く。気まずくなったり照れたときに出る主の癖だ。
「再会出来た喜びに水差すつもりはないんだけどよ、Aにはこれから説明したいこともあるし、御上に聞きたいこともある。……これからはずっと一緒にいられるんだ。抱き締めてやるなり可愛がるなり、そんぐらい毎日してやれよな。」
主はいつも強がっているようでいて、本当は誰よりも優しくて気遣いのできる人なのだろう。その瞳は心なしかいつもより柔らかそうに微笑まれていたから。
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作者名:ルイス | 作成日時:2016年10月25日 0時