7話 ページ8
「光忠……急いであいつらを呼んできて来れねぇか。」
「うん、大丈夫だよ。」
主からの言葉を聞くやいなや、もう分かっていたとでも言いたげに駆けていった近侍の姿を背に感じながら、目の前のその小さな肩にどこかぎこちなく声をかけた。
「俺の事………怖かったか?」
いいえ、と首をふるふると横に振りながら今日会って初めての彼女の笑顔を見た。
花のように可憐に微笑まれれば、思わず赤くなった自分の頬を意識して反射的に目を逸らす。
Aはそんな蒼斗の様子にきょとんと首を傾げたが、あぁ、きっと女の子に不慣れな人なんだな、とすぐその考えにたどり着き自分の主もこうだったと今は亡き総司と目の前のぶっきら棒だけど、どこか優しいその人とを無意識のうちに重ねていた。
「ああ、俺は蒼斗っていうんだ。詳しい事は後から話すけど、取り敢えず今日からお前の主ってことなんだけど……そこら辺大丈夫か……?」
『!!…………あ、』
この人が私の主になる。その事が決して嫌なわけではないがもう少し事情を話してほしい。だいたい私はさっきまで眠っていたわけで、それを強い意識によって起こされ何が起こったのかさっぱりなのだ。
…………一緒に目覚めよう、と眠る前に約束した愛しい兄の姿も見つけられない。
『それは……………………』
「主!連れてきたよ!」
言いかけた言葉は先程の男の人によって閉ざされてしまった。どうやら誰かを連れてきたらしく、今も走ってすっかりあがった息を整えている。とても優しい人だった。急に泣き出した見ず知らずの女の子にああも親切にしてくれる人なかなかいないだろう。
大丈夫ですか、と声をかけようとした時、次いで聞こえてきたのはきっとその人がわざわざ走ってまで連れてきたという人だろうか。
「……ねぇ急にどうしたの、光忠。何でもいいから着いてきてって意味分からないんだけど。」
「あーあ。折角マニキュア塗り直してたのに〜。」
………まさか。
そんな奇跡がこの世に存在するのだろうか。
聞き覚えのある懐かしいその声。
会いたいと神にまで祈ったその愛しい存在。
あのみんなで過ごした愛する思い出に手を伸ばしても脆く消え去っていったというのに。
だって目の前に現れたその姿は、
兄と慕っていた2人だったのだから。
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作者名:ルイス | 作成日時:2016年10月25日 0時