20話 ページ21
『いいえ』
初めはちょっと戸惑いましたけどね、なんて月を仰ぎ見ながら零した言葉。その横顔がとても綺麗で、儚げで。普段、物語も読まないし、物思いにふけるなんてこともないけれど、竹取物語のかぐや姫も元の場所へ帰らなければいけないと思い出した時こうして物憂げに月を眺めていたのだろうか。
『……実は私、まだ眠っている時に願ったんです』
――もし、この世に神様がいるのなら、
清光兄さまと安定兄さまにもう1度だけでいいから会わせて下さい――
『そしたらいきなり強い意識みたいなものに呼び起こされて、気付いたら目の前に蒼斗さま…主さまがいて』
兄さま達の元へと導いてくれたんです。だから…私にとっての神様は主さまですね、と彼女は微かに笑った。
『確かに総司様もその恋人だった主様も私にとって大切な人。だけど今、ここに私がいれるのは貴方が鍛刀してくれたから……。
私は今を生きる貴方を主と呼びたいんです。』
Aはその両手で蒼斗の手を握り、まるで誓いをたてるかのように掌へ軽く口づけを落とした。
月明かりに照らされたその姿はひどく神秘的で美しい、と蒼斗は密かに思う。
Aがまたこうして実体を得ることになった理由は完全には分からないけれど、それでもこの小さな存在だけは何があっても守らなければいけない。1人には、もうさせたくない。
「Aー?どこにいるのー?」
タイミングが良いのか悪いのか、響いた声は清光のもの。
隣りには安定もついていて、さてはお前ら聞いてただろって目をした蒼斗が一つ溜息をついた。
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作者名:ルイス | 作成日時:2016年10月25日 0時