桜のゆくえ【刀剣乱舞】 (ページ3)

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2話ページ3

「俺は結構早いうちに主に鍛刀されて今までいるけどさ、ずっと待ってても来てくれないんだ。それどころかレア物の三日月とかまで来ちまったし。……全く、どこで眠りこけてるんだろうね。いつになったら家の眠り姫は目覚めてくれるんだろ…」

止めてくれ、そんな話これ以上聞きたくない。痛々しくてただ僕達の心を抉っていくだけだから。
「………もう、来ないよ。」
「……………そんなことないよ。」
「来るわけないだろ！！」
咄嗟に出た声は周りののどかな自然を壊すぐらいの勢いを持った怒り声。
これは清光に対して怒ったわけではなくて、ましてや誰がなんだとかいう問題ではなくて。
悪いのは、この僕だ。
最後の時に約束したのに。

『ねぇ、安定兄さま。目覚める時は一緒に目覚めましょう？そしたら私は眠ってる間にいっぱいお話を用意しておくから兄さまは、』

ぎゅって、壊れるくらいに抱きしめて。

泣きながら微笑んだあの顔がいつまでも僕の心に残って語りかける。
分かったよって、そう言って頭を撫でた感触もまだ残っているというのに、彼女とまた出会える日は二度と来ない。

「僕は……あいつとの、Aとの約束を破ったんだ！」
きっと今でも自分を待ち続けている彼女を残して。

「……俺は、お前が羨ましいよ。」
ぽつりと少し寂しげに呟かれた声は僕の昂った感情をうっすらと現実に引き戻していった。
「だって最後にAの顔を見れたんだろ？沖田くんの最期にだって立ち会えた。それだけで俺にはお前が羨ましい。」

…途中の戦いで壊れてしまった清光にはその後の出来事は分からない。それからのAの様子も沖田くんの最期も、彼には知り得ないことばかりだった。愛しい人に見送られて死んでいった清光と愛しい人の死を傍らの小さな愛しい存在と共に最後まで見送れた自分と、一体どちらが幸せだったというのか。
「………ごめん。勝手に声荒らげて。」
俯きがちにそれだけ告げれば、俺の方もごめん、とまた謝られた。
そしておもむろに立ち上がった清光は、たすきを取りながらその後の言葉を紡いでいく。