其ノ玖 鬼舞辻無惨という男 ページ10
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「どこへ行っていた」
『上弦の鬼の皆様にご挨拶をして参りました。
日中は黒死牟さまのお屋敷にいました』
無限城に帰ると無残さまの機嫌がよろしくないご様子だった。
『どうかされたのですか?』
「鬼殺隊という名の蝿に嗅ぎ回されて気分が悪い。
無限城に帰ってこの苛立ちを沈めてくれるAを探したが見当たらない。
1日帰って来ないとは何事だ」
本来ならば誰しもが、彼の怒りを目にして怯え震えることだろう。
しかし無惨さまがわたしに対してそのような感情を覚えていることに歓びを覚えるわたしは常軌を逸していると自分でも思う。
『うふふ』
わたしが笑うと彼は目を見開き、驚いた顔をした。
「何がおかしい」
『あなたはわたしのことを必要としてくださるんですね。
貴方さまに求められているのだと思うと心が踊る』
「……食えない女だな、A」
『あら、そんな警戒しないでください。
わたしは元よりあなたのものです』
「……フッ」
満足気に妖しく笑う無惨さまは先ほどとは打って変わり気分良さげだ。
「私のものだと言うのならばさっそく任務を与えよう。
“月彦”としての仕事がある、お前も来い」
『仰せのままに』
無惨さまはわたしの肩を抱き、人のざわめきが聞こえる街へ繰り出した。
『月彦さん、今日は月が綺麗ね』
「ああ、Aのように美しい月だ」
『まあ、お上手ですこと』
彼が「月彦」として人に溶け込んでいる時は、わたしは妻として彼と過ごしている。
それは無惨さまが人と接することで鬼であるということを隠し、鬼殺隊を欺くための工作だった。
「もし、そこのお方」
仲睦まじい夫婦を演じていると、不意にひとりの男に声をかけられた。
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ノン - 面白いです。これからも、頑張ってください!応援してます。続きが楽しみです! (2020年8月17日 15時) (レス) id: 5790125387 (このIDを非表示/違反報告)
すみすみすみー - 稀血の女の子が鬼と暮らす場合ですか…おもしろそうですね!更新頑張ってください!こちらも応援します! (2019年10月1日 19時) (レス) id: f033c55e4a (このIDを非表示/違反報告)
いお(プロフ) - (´・ω・`)さん» うわわっ!早速コメントありがとうございます( *˙ ˙* )やる気出てきました頑張ります!!! (2019年9月21日 17時) (レス) id: f9a4668cbc (このIDを非表示/違反報告)
(´・ω・`) - 好き…更新頑張って… (2019年9月21日 8時) (レス) id: 03f6bf06e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いお | 作成日時:2019年9月20日 22時